悪天候のロングランも苦にならない
具体的にもう少し詳しくみていこう。フィットクロスターの諸性能の中で非常に優れていると感じられた点でまず挙げたいのは直進性の良さだ。強い横風を受けたりワダチを踏んだりしてもチョロチョロと進路が変わったりしないので、クルーズ時に神経を尖らせる必要がない。このおかげで東京から九州までのロングランは大変楽なものになった。
ハンドリングは徹底的に安定方向に振られていた。刺激性は薄いが、天候や路面コンディションを問わず、どんな技量のドライバーでも安心して走れる
テスト車がAWDだったためか、悪天候時の安定性も優れていた。今夏は立秋頃から天候が崩れ、荒れ模様の天候下でのドライブが多かったが、小型の台風が九州に上陸した際に強めの風雨の中をドライブしても不安を抱かずに済んだほどだった。
ホンダは小型車のAWDについては伝統的に前輪駆動を基本とし、前輪が空転した時に後輪に力を配分する簡易型のシステムを使っていたが、第4世代フィットは常時、後輪にも駆動力を配分するフルタイムAWDになった。そのことも寄与していた可能性がある。
フルタイムAWD化されたおかげで砂利道などの走破性は大幅に上がった
第2は路面状況や天候によらず乗り心地が良く、静粛性が高いこと。本稿執筆時点で未試乗のアクアとの比較はわからないが、ヤリス、ノート、マツダ「マツダ2(旧デミオ)」、スズキ「スイフト」など国産Bセグメント群のライバルと対比して、乗り心地ではこのフィットクロスターが最も優れていた。静粛性もノートと互角の高さであった。ちなみにフィットはガソリン版とハイブリッド版でサスペンションチューニングが異なっており、ハイブリッド版のほうが滑らかだ。
フィットクロスターの前席。スペース的には余裕があり、長距離を走っても窮屈さは感じられなかった
運転席から見える斜め前の景色。死角が小さく、余計な緊張をしなくて済むデザイン
第3は室内が広く、眺望も良いこと。運転席からの眺めはスタイリングから連想される通り良好で、視線移動が少なく、死角を凝視する必要性も少ないので、長時間移動の眼精疲労はとても小さかった。
前席だけでなく後席からの眺望も良いのも美点。鹿児島エリアで後席に乗ってみたが、着座位置が高いうえ、前席の肩の部分が丸くカットされているので圧迫感が少なく、前方、側方の両方がよく見晴らせる。もちろん広さも申し分なかった。
前席のショルダー部が丸く切り落とされており、後席の圧迫感が非常に小さいのが特徴
後席の膝下空間は余裕たっぷりだった
e:HEVとAWDの組み合わせだと荷室は狭くなるが、それでもBセグメントの標準は大きく上回っていた