フィットは「究極の白物クルマ」
今夏、そのフィットのクロスオーバーSUV版「フィットクロスター」をじっくり乗り込む機会があった。当然、何がそれほどまで販売にブレーキをかけることになっているのかということも大事な観察の対象である。
ロードテスト車は「e:HEV」と称するストロングハイブリッドシステムを積んだもので、駆動方式はAWD(4輪駆動)。オプションとしてルーフレールとカーナビが装備されていた。試乗ルートは東京~九州で往路は山陽道、復路は山陰道を経由。総走行距離は3411.2kmで、道路比率は市街地2、郊外路5、有料高速2、山岳路1。
インプレッションに入っていこう。フィットクロスターは大径タイヤを履き、サスペンションも通常版のフィットとは異なるチューニングであるなどフィットシリーズの中ではプレジャー重視のグレードだが、使い勝手や基本的な走りの特性などは普通のフィットとほぼ同一である。その印象を一言で表現すると“究極の白物グルマ”。
デザインはカーマニアを喜ばせるような色気が希薄で、とくにインテリアは素っ気ない。運転していてワクワクさせられるようなドライビングプレジャーがあるわけでもない。だが、走行安定性は抜群に高く、乗り心地は現行の国産Bセグメントの中でも良く、静粛性も驚くほど高い。居住空間は広く、荷室容量も十分だ。ADAS(運転支援システム)はステアリングアシストありの「ホンダセンシング」が標準装備である。
最近はサブコンパクトクラスもSUV、トールワゴン、3列シートミニバン等々、商品が多様化している。古典的な5ドアハッチバックを作る場合、それらに埋没しないように情感、質感をそれなりに重視しながら作るのが今のトレンドである。
フィットはそのトレンドの逆張り。大事なものは落とさずに余計なものを極力排し、ユーザーが自分のライフスタイルに合わせて使い倒すための道具に徹する、いわゆるミニマリズム的なクルマと言える。