ライフ

高齢者への「多剤処方」問題 医師と患者のコミュニケーション不足が原因に

「薬の危険な飲み合わせ」には注意したい(イメージ)

「薬の危険な飲み合わせ」には注意したい(イメージ)

 高齢になり基礎疾患が増え、あちこちの病院にかかることで薬が増えていく「多剤処方」。これによって病状がさらに悪化するリスクも指摘されている。その背景には、医師が漫然と処方を続けてしまうことや知識不足もある。そして、大きな問題はそうした多剤処方のなかに、「薬の危険な飲み合わせ」が含まれる恐れがあることだ。実際にそうした事例は多数報告されている。

 まず参照したいのが、公益財団法人日本医療機能評価機構が公表する「薬局ヒヤリ・ハット事例」だ。全国4万超の薬局から危険な処方の事例を収集しまとめている。

 向精神薬のリチウム製剤を服用中の50代男性に、非ステロイド性抗炎症薬が追加処方されたケースがあった(別表症例)。薬局で、患者が薬剤師に「向精神薬の処方医に非ステロイド性抗炎症薬の薬は服用しないよう言われている」と話したことから、疑義照会でアセトアミノフェンに処方が変更された。

 同事例が発生した要因は、〈患者とのコミュニケーション不足〉とされる。一石英一郎医師(国際医療福祉大学病院消化器内科予防医学センター教授)はこう語る。

「現役世代の男性なので、精神科や心療内科への通院の事実を自分から言いにくかったのでしょう。医師は他に服用している薬があるかどうかを詳しく聞かず、とりあえず痛みによく効く非ステロイド性抗炎症薬を処方したのかもしれません。しかし、これを向精神薬のリチウム製剤と併用すると、リチウム中毒になる恐れがあります。吐き気や下痢などの消化器症状のほか、意識障害が起こるとされます」(一石医師)

 糖尿病治療のためインスリン製剤を投与中の70代男性は、浮腫が出たため別の病院でループ利尿薬を処方された。薬局は併用注意について説明したが、1週間後、「インスリン製剤の単位数を上げても血糖値がどんどん上がる」と相談を受け、処方医に疑義照会したところ、ループ利尿薬が処方削除されたという。

「両剤の併用では、血糖降下作用が著しく弱まる恐れがあり、高血糖の状態が続くと激しい喉の渇き、多尿、頻尿が生じ脱水状態になります。脳細胞の水分が奪われて最悪、昏睡状態に陥ることもある。事例には〈(ループ利尿薬の)処方医はインスリン製剤を使用していることは知っていた〉とあるため、糖尿病に詳しくない医師だったのかもしれません」(一石医師)

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン