スポーツ

照ノ富士が敗北の波乱でも「座布団」が舞わなくなった国技館 背景は

座布団が飛ぶことも(時事通信フォト)

かつては番狂わせで座布団が飛んだこともあったのに今場所は…(時事通信フォト。写真は2019年の名古屋場所)

 9月23日の大相撲秋場所12日目、結びの一番で新横綱・照ノ富士が関脇・明生の下手投げで不覚を取った。独走状態だった照ノ富士の横綱昇進場所での優勝に待ったをかけた。ただ、番狂わせがあった際によく見られる「座布団が舞う」という光景は見られなかった。相撲担当記者が語る。

「本場所の土俵で横綱が格下の力士に負けるなど、番狂わせの一番に対して座布団を投げてお祝いをするのは、『座布団の舞』と呼ばれる。投げられた座布団が他の観客や力士に当たって危険なので“座布団を投げないでください”と館内放送が流れるし、入場者に配布される取組表にも“座布団や物を投げて人に怪我をさせた場合は、暴行罪・傷害罪に該当する場合があります。物は絶対に投げないようにお願いします”と書かれているが、座布団を投げるのは勝った力士に祝儀であると同時に横綱へのヤジでもある。座布団が舞うほど価値ある一番だったことになり、その光景が見られるのは本場所を観戦した者の特権ともいわれている」

 座布団投げの起源は、江戸時代に遡るとされる。元々は「羽織投げ」と呼ばれ、観客が贔屓の力士が勝った際に土俵に羽織を投げるという習慣があり、その羽織を返却してもらいに行く時に祝儀を渡した。その羽織投げの習慣が座布団投げに引き継がれているという。

 最も多くの座布団が飛んだといわれるのが、1975年の大阪場所で大関・貴ノ花が横綱・北の湖を優勝決定戦で破った一番だといわれている。のちに北の湖が「花道を下がりながら天井が見えなかった」と言ったほどだ。

 平成の大横綱・貴乃花光司氏は本誌・週刊ポスト(2021年9月17日発売号)のインタビューで、こう語っていた。

「自分が負けた後に座布団が舞ったり、うなだれたところに座布団が当たったりすると余計に心が痛みます。一方で、自分が負けて喜んでいるお客さんがいると、入門した時に師匠から“負けて喜ばれる存在にならないと力士をやっている意味がないぞ”と教わったことを思い出した。花道を下がりながらいろんなことを考えるわけです」

 もちろん、人に当たれば危険という面はある。2008年の九州場所では試験的に座布団を投げられないように工夫を施した。“2人用”の座布団を用意したうえで、2枚をヒモで結んだのである。その結果、桝席で4人のうち1人でも座っていると座布団が投げられなくなる。この方法がそれ以降も採用される九州場所では、座布団が舞わなくなった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン