ネタ番組を量産したいフジテレビ
「なぜ令和の今、ドリフなのか」という理由には、フジテレビの事情も含まれています。
昨春の視聴率調査リニューアル以降、民放各局はスポンサー受けがよくCM収入につながりやすい10~40代に向けた番組制作を進めるようになりました。その世代が好む「お笑い系の企画が1つでもほしい」というのが本音であり、なかでも優先度が高いのは、幅広い年齢層の視聴者が見やすいネタ番組。
実際フジテレビ系はこの1か月だけで、『FNSラフ&ミュージック』『お笑いオムニバスGP』『ツギクル芸人グランプリ2021』『ドリフに大挑戦スペシャル』を放送し、28日にも『お笑い王者が激推し!最強ピンネタ15連発』が予定されています。
この中でもドリフのコントは最もシンプルでわかりやすく、ファミリー視聴に最適。フジテレビとしては自局の看板コンテンツだった「ドリフのコントと向き合わず放置する」というわけにはいかないのでしょう。
先月末、BPO(放送倫理・番組向上機構)の青少年委員会は、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティ」を審議対象とすることを明かし、今なお議論を呼んでいます。もともとドリフのコントは体を張るスタイルがベースになっているほか、現在の視聴者感覚では差別やハラスメントなどの批判を受けかねないものも多く、すべてを継承できるわけではないでしょう。
しかし、だからこそ現在でも放送できる形にアップデートしながら続けていくことは重要であり、その意味で今回の『ドリフに大挑戦スペシャル』にかかる期待は大きいものがあるのです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。