Googleによる買収で「YouTube一強」に
「1つはYouTube含めて様々なソーシャルメディアが普及したことです。HIKAKINさんもYouTubeでの発信だけでなく、TwitterやInstagram、TikTokなど色々なソーシャルメディアを使いこなしていて、それらを含めた影響力を持っていますよね。優れた動画クリエイターという面ももちろんありますが、HIKAKINさんのキャラクター自体がコンテンツになっているのは、そうしたさまざまなソーシャルメディアでの多面的な発信が可能になっているということが背景にあります。
もう1つはスマートフォンの普及です。10年前はまだ新しモノ好きな人が中心となって使っていましたが、今では10代~30代だとほぼ100%近くの人が利用していますし、日本全体の利用率を見ても8割を超えています。そのため、多くの人が空き時間にYouTubeの動画を見ることができるようになって、とても身近なものになりました。スマートフォンの普及によって、コンテンツの消費量が圧倒的に増えたのです。
加えて言うと、10年前を振り返ると色々な動画サービスがありました。けれどこの10年でほとんどYouTube一強と言っていい状況へと変化していった。特にGoogleがYouTubeを買収してからは設備投資もマーケティングも強化されて、どんどんプレゼンスを高めていきました。動画サービスがYouTubeに集約されることで、色々な種類の動画が一箇所で視聴できるようになりましたし、そこにお金が流れ込むことでYouTuberという職業が生まれたとも言えそうです」(天野氏)
さらに天野氏によれば、ソーシャルメディアとスマートフォンの普及によって、現在では新しいビジネスのあり方も注目されているという。
「今年に入ってからは“クリエイターエコノミー”というキーワードがよく使われています。誰もが個人で情報発信できるようになったことで、さまざまな人がある種のクリエイターとしての側面を持つようになり、そこに新しい経済圏が形成されるという考え方です。今ではYouTuberもYouTubeだけではなくて、色々なソーシャルメディアで広告案件をこなしたり、自分でブランドを初めてビジネスを展開したりしていますよね。
もちろん、インターネット上で影響力を持つ人がその影響力を活かしてビジネスをするということ自体は以前からありました。けれどこの10年でソーシャルメディアとスマートフォンが普及したことで、インフルエンサービジネスの手段が豊富かつ簡便になったり、その規模が格段に大きくなったりしています。そうした変化も相まって、もともとはアメリカで言われ始めたクリエイターエコノミーのコンセプトが輸入されて、日本でも唱えられるようになっていったんです」(天野氏)