「あの組織は終わりです」
林住職は、「7月の名古屋場所前に私の娘が、白鵬が一代年寄になれないことについて抗議する手紙を八角理事長宛に送ったのです」と明かした。
それに対する協会の反応は、林住職を驚かせるものだったという。
「すごい返事が来ました。私に九州溜会会長を辞めろと要求してきたんです。手紙はあくまで娘が出したもので、そこに一言だけ“私の父は九州溜会の会長をしています”と書いていた。娘も八角理事長と面識があったのですが、覚えてないかもしれないので自己紹介のように書き加えただけだったのですが……」
九州溜会は、九州場所の「維持員」の親睦団体だ。維持員は相撲協会のいわば“公式のタニマチ”で、一定額以上の寄付金(維持費)を払い、本場所では土俵下の溜席で競技に立ち合う。地区ごとに分かれており、九州場所の場合は維持員となるのに138万円の寄付(原則、6ケ年分一括納入)が必要となる。協会を支える熱心な好角家が集った団体のトップに退任を求めるとは、ただならぬ事態だ。
「最初は九州場所担当の親方が(九州溜会の)事務局に電話を掛けてきて、“九州場所の開催にあたり、こういう考え方の会長がいるのはまずい”などと言ってきたそうです。その後、7月の名古屋場所中には、協会から文書も送られてきた。八角理事長の代理として事務方トップの主事が差出人で、娘の手紙が“九州溜会の意見なのか、会長個人の意見なのか”を問う内容でした。もちろん、どちらでもない。あくまで娘が自身の考えを書いたものだと、溜会の事務局を通じて説明してもダメでしたね。
娘が、“白鵬は一代年寄になるべきで、提言書は人種差別。これは問題になる”といったことを書いていたことが協会への脅迫にあたるとの主張をされました。“そういう会長がいる組織とは歩調を合わせられない”などと指摘され、私にとってはむしろそれが脅しに感じられましたよ。
ただ、他の会員に迷惑をかけるわけにはいかないので、9月初めの理事会で“体調不良”を理由に自ら身を引きました」(林住職)
協会から送られてきた書面は九州溜会の事務局にあるはずというが、確認のため取材を申し入れると、応対した事務局長は協会から手紙がきたことは認めたものの、「内容はわからない。会長交代はあくまで体調不良が理由」とした。
退任に至った経緯について、林住職は白鵬本人にも説明したという。
「驚いていましたが、まあ、白鵬は他人の批判はしませんからね。(九州場所の)宿舎の受け入れは続けるからという話をしました」