ライフ

薬物抵抗性うつ病の再発抑制に「rTMS療法」の有効性を検証

「rTMS療法」の特徴は?(イラスト/いかわ やすとし)

「rTMS療法」の特徴は?(イラスト/いかわ やすとし)

 AIを使ってオンラインでメンタルチェックができる『KOKOROBO』に携わっている、国立精神・神経医療研究センター病院第一精神診療部兼臨床心理部部長の鬼頭伸輔医師は、うつ病治療機器の反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の研究も進行中だ。rTMS療法とは専用コイルを頭部に当て、通電して大脳皮質を刺激、うつ症状を改善する。現在、薬物が効かないうつ病患者に週5日6週間までは保険治療が認められているが、再発抑制のため継続治療できるよう臨床試験の準備を整えている。

 厚労省の調査によると、うつ病など気分障害の患者数は平成8年では43万人強だったのが、平成20年には約104万人と12年間で2.4倍に増加した。病院で受診していない患者も多く、また新型コロナの影響で潜在患者はもっと増えているのでは、と予想されている。

 治療は抗うつ剤などの薬物療法が行なわれるが、3分の1の症例には薬物が効かないといわれている。そうした薬物抵抗性のうつ病に対して実施されている治療が、rTMS療法だ。これはM.ファラデーの電磁誘導の法則に基づき、生体を直接刺激する。

 使用方法は専用のコイルを頭部に当て200~300μ秒で瞬間的に電流を流す。するとコイル周辺に磁場が生じ、コイル内の電流とは逆方向に渦電流(誘導電流)がコイルの上下面に沿って流れる。この誘導電流が大脳皮質の神経軸索を規則的に繰り返し刺激して活動を変化させる。

 前述の鬼頭伸輔部長に訊く。

「うつ病は大脳皮質と脳の奥にある辺縁系とのバランスが崩れて起こります。よって、うつ病の治療は皮質と辺縁系のバランスを取り戻すことを目的としています。辺縁系は情動に関連し、皮質は認知機能に関連しています。抗うつ剤などの薬物は辺縁系を改善してから、皮質に作用します。rTMS療法は逆に、まず皮質に作用してから、辺縁系を改善し、バランスを取ります」

 抗うつ剤などの薬物は主にセロトニンとノルアドレナリンに作用するが、rTMS療法はドパミンを放出してドパミン系に作用する。薬物の効かない患者にはセロトニンとノルアドレナリンの分泌をさらに促進しても、効果が得られにくい。一方、rTMS療法ではドパミンの分泌を促進するため、効果が高まると考えられているのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン