とはいえ、たとえ実録映画でも「実は6」もあれば充分である。東映実録路線の裏でプロデューサーを務めていた山口組のカリスマ・田岡一雄三代目組長の実子である田岡満氏は、生前のインタビューでこう語っている。
「オヤジは映画マニアじゃなかったけど、本質の分かる人やったから、たとえどんなふうに描いても『あんなもん、映画やないか』と、それで終わりだった。事実通りだと映画は面白くない」
フィクションを現実と比較したところで、それになんの意味もない。そう理解する冷静さがヤクザにはあった。
【プロフィール】
鈴木智彦(すずき・ともひこ)/1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。雑誌・広告カメラマンを経て、ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。近著に『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』(小学館文庫)。
※週刊ポスト2021年10月15・22日号