動画で小説を紹介する上で、けんご氏は“読みやすさ”をアピールすることを意識している。若者の共感を誘うような言葉選びもポイントのひとつだ。
「たとえば、綾崎隼さんの『死にたがりの君に贈る物語』(ポプラ社)という小説を紹介したときは、“推し”という言葉を使いました。この作品の中に推しという言葉は出てこないんですが、現代の中高生にとっては共感できる文言ですし、何より小説の内容にも合っています。そのため、あえて推しという言葉を選択しました」(けんご氏)
普段あまり小説を読まない人の立場に寄り添い、読みやすさをアピールする紹介の仕方に対して、もともとの読書家から反発が寄せられることもある。
「批判もあることにはありますが、何も気にしていません。結果的に本を読む人が増えるならいいじゃないか、という考えです」(けんご氏)
「読書好き」という限られたパイを奪い合うだけでは未来は開けない。そうならないためには、新たに読書好きを増やしていく必要がある。TikTokを通して若者が本を手に取るきっかけを作るけんご氏は、業界の希望の星と言えそうだ。
◆取材・文/原田イチボ(HEW)