冒頭の熊本知事選挙は〈選挙は不要不急の外出には当たらない〉との方針を初めて世に知らしめ、〈選挙期間中も公務に専念〉を宣言した現職が選挙延期を申し出た元市長を圧倒して決着。以来演説会も握手も避けるが選挙は決行というのが、新しい常識となった。

 時に有力候補から嫌われ、予定を隠される度に「意地でも突き止めるノウハウを磨いた」著者としても戦略変更は必須。オリジナルの〈街宣スタンプ帳〉を作り、「全員+生」をなおも貫く取材姿勢には、頭が下がる。

「でもまあ基本的に好きでやってることなんで(笑)。例えば〈選挙運動ゼロ〉の現職勝利に終わった熊本知事選が無駄な選挙だったかというと、絶対に違うと僕は思う。数百票の得票で終わる無頼系候補もそうですが、彼ら対立候補が出て初めて選挙は成立し、玉石含めた多くの政策が示されます。熊本では、ある県政の課題を元市長が争点に掲げたから現職も対策に動いた。単に誰が勝ったかで選挙を終わらせてはいけない。

 候補者と有権者が選挙を通じて成長した先によりよい政治や社会はあるはずです。選挙を過程と捉え、無駄にするもしないも、僕ら有権者次第だと思います」

最初はイロモノ扱いでも金の卵

 候補者も政策も決して今が完成形ではなく、誰か魅力ある人物に各々が思う政策を足したり引いたりし、有権者も一緒に育っていくことは十分可能だという。

「特に日本は双方向のコミュニケーションが圧倒的に足りていないんです。基本的に面白いんですよ、選挙に出る人って。だからいろんな選挙事務所を気軽に訪ねてみてほしい。直接会う情報量って物凄いから、マスク姿を遠目に見るだけでも勘が働きます。そしてこれはいい、と思う人にはどんどん関わってほしい」

 著者が感染対策上の変化以上に危惧するのが、投票率の恒常的な低下傾向だ。

「例えば投票を義務化したオーストラリアでは、棄権した場合の罰金は約2000円です。それで投票率は90%以上。日本も選挙に行けば1万円もらえるなどの工夫をしないと、投票率向上は無理かもしれません。難しく語られがちな選挙や政治をもっと気軽に語れるものにすることも大事です。家族や友人と連れだって選挙に行くなど、日頃から選挙に親しんでほしい。だからお気楽な“漫遊記”にしたんです。実際はコロナで美食にも温泉にもありつけず、なかなか漫遊できていないんですけどね(笑)。

 僕は選挙が観光資源にもなると思っています。選挙ツーリズムを広めたい。なぜなら、よその選挙の方が冷静に観察できるからです。その経験値が地元の選挙に生きればいいし、選挙漫遊は純粋に楽しいんです」

関連記事

トピックス

新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
あとは「ワールドシリーズMVP」(写真/EPA=時事)
大谷翔平、残された唯一の勲章「WシリーズMVP」に立ちはだかるブルージェイズの主砲ゲレーロJr. シュナイダー監督の「申告敬遠」も“意外な難敵”に
週刊ポスト
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左/バトル・ニュース提供、右/時事通信フォト)
《激しい損傷》「50メートルくらい遺体を引きずって……」岩手県北上市・温泉旅館の従業員がクマ被害で死亡、猟友会が語る“緊迫の現場”
NEWSポストセブン
財務官僚出身の積極財政派として知られる片山さつき氏(時事通信フォト)
《増税派のラスボスを外し…》積極財政を掲げる高市早苗首相が財務省へ放った「三本の矢」 財務大臣として送り込まれた片山さつき氏は“刺客”
週刊ポスト
WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
NEWSポストセブン