ボートマッチ・サービスを利用したものの、やはり投票先が決まらないということもあるはずだ。特に若者の中からは、ベターな選択肢を見つけることができず、政治に詳しい他の人に任せておく方が世の中のためになる、といった意見が出ることもある。
それでも投票に行かなければならない理由とはなんだろうか。室橋氏は若者に向けてこう呼びかける。
「投票先に正解があるわけではありません。社会の一員として、声を届けることが若い世代、将来世代に目を向けるきっかけにもなります。学費や賃金、ジェンダーの問題など、自分が気になるテーマで投票することが、将来的な解決にもつながります。投票は簡単に社会に声を届けられるツールなので、ぜひとも活用してもらいたいと思います」
最終的に投票したい政党や候補者が見つからなければ、「白票」という手段もある。白票は棄権とは異なり投票率にカウントされるので、「投票先がない」ことの意思表示にはなるだろう。前回2017年の衆院選における20代投票率は33.85%だった。棄権の理由はさまざまであり、全員が「投票先がない」と考えていたわけではないだろうが、もしも棄権した66.15%がすべて白票を投じていたら、議論が生じ政策にも影響を及ぼしていたかもしれない。いずれにしても投票に出かけることが、政治参加の重要な手段であることは間違いない。
そもそも、有権者の中に政治のスペシャリストはほんの一握りしかいない。大半は政治に対して無知な状態で投票を行うしかない。とはいえ、市民の生活と政治は地続きなのであって、「より良い生活をしたい」と思うのであれば、その考えを1票として投じることは現行の選挙制度においてはとても意義があることだ。その際にボートマッチ・サービスも役立てることができるのではないだろうか。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)