投与箇所は脳内の神経細胞が障害を受けた場所を画像検査で特定して頭蓋骨に小さな穴を開ける。その穴に金属製の細い筒を挿入し、培養して大量に増えた自家骨髄間質幹細胞を障害された神経細胞に直接投与するという流れだ。
「投与後1年間の観察期間を経てMRIとリハビリ機能評価で安全性と有効性を確認しました。対象の7人全員に重篤な合併症はなく、安全性が担保されました。また従来であれば歩行困難だと思われていた7人でしたが、そのうち6人が自力歩行可能となり、一定の有効性も推定されたのです」(藤村教授)
効果が確認された理由として骨髄間質幹細胞は様々な栄養因子を出すため、この栄養因子が周囲の細胞の回復をサポートしたのでは、と考えられている。さらに投与1か月以上経過後に神経細胞の分化も始まり、2段階の回復効果が得られたとの見方もある。
それらの結果を受け、すでに2023年開始の第2相試験の準備が始まっている。次回は発症後時間が経った慢性期の患者も対象となる予定だ。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2021年11月12日号