神野に「負けた…」と凹む甘利田。たいていのグルメコメディは、料理を探したり、創ったり、デコレーションしたりするものだが、選ぶことも作ることもできない給食だからこそ、不思議なドラマになるというのは、目からうろこ。インスタも何もなく、ただ食べて消えていく時代を舞台にしているところもいい。市原隼人は、やけに力んで胸を張り、立っているだけですでに笑える。そして、給食を前に踊るわ、歌うわ、喜怒哀楽のすべてをぶつけ、ぐったりする甘利田を全力で演じて、本当にぐったりしているようにも見える。体育会系の変人といった感じだ。
また、このシリーズは、給食をきっかけにさまざまなことを思い出す。近年、あまりなかった「郷愁」のドラマという見方もできる。かつて甘利田に給食のことで怒りをぶつけられて以来、「要注意人物」として監視の目を光らせる教育委員会の鏑木を直江喜一が演じていることも、ちょっと郷愁。『金八先生』の不良生徒・加藤優役で注目された彼が、教育委員会のおじさんでいい味を出す。なかなか感慨深い。
劇場版第一弾では、神野が「みんなで同じ時間に同じものを食べる」喜びを語り、ほろりとさせた。来年には劇場版第二弾が公開予定。コロナ禍で中止されたり、メニューが限定されたり、黙食が続く中、このドラマや映画とともに現在の給食事情も時代の記憶として残っていくのは間違いない。