短時間で終わるケースもあるとはいえ、警察官に囲まれている間の「周囲の視線がつらい」とA氏は言う。
「公衆の面前で店のシャッターに手を付き、ポケットを探られるのは屈辱的ですね。小学生の娘の目の前でパトカーに横付けされ、身体調査をされるのもつらい。『パパ、逮捕されちゃうの?』って……。警察官によっては、営業中の店舗に入ってくる人もいます。自分よりはるかに若い警察官に『これからどこ行くの?』などと高圧的な態度で詰問されるのも不本意ですね」
これまで、「職質には100%協力してきました」というA氏だが、憤懣やるかたない思いは隠せなかった。前出・秋山氏が語る。
「Aさんは職質に協力しながら、何度も同じ思いをされており気の毒に思います。警察OBとして、ご協力にも感謝の念でいっぱいです。見た目が“目立つ”方が職務質問の対象になりやすいのは事実で、これは、この先の課題として考えるべきことです。ただ、警察官は決して嫌がらせ目的で職質を行なっているわけではないことはご理解いただきたい。やましいことがないのに頑なに拒否すると、怪しまれて不利益を被るリスクが高まってしまいます」
警察庁の大号令から15年余り。職質するお巡りさんがよほど理不尽でなければ、素直に“協力”するのが市民の務めなのだろう。