ガーナ赴任時の村井氏

ガーナ赴任時の村井氏

 村井氏は測量工学の知識を総動員して地震予測をブラッシュアップし、電子基準点のX軸、Y軸、Z軸という三次元の座標軸の動きなどから、地殻の微小な変動を解析する方法を編み出した。

「この方法で十勝沖地震以降の大きな地震をいくつか調べると、すべてで前兆となる変動が確認できました。“気づき”は“確信”へと変わり、これまでの地震学では成しえなかった新しい地震予測を測量工学が可能にすることが分かり、大いに興奮しました」

 村井氏と荒木氏は共同研究の成果を「地震・火山噴火予知」という特許にまとめた。だが、思わぬ反応が待っていた。

「1度目の特許出願は特許庁から拒絶されて、さらに2度目、3度目も拒絶されました。その理由も『こんな地震予測なら誰でも考えられる』など難癖に近いもので、絶望すら感じました。おそらく地震の専門家が審査員で、部外者である我々の提案が気に入らなかったのでしょう」

 2006年、一部補正してようやく特許が認定されたが、周りの目は変わらず、成果を世の中に還元することができなかった。

ピンポイントで予測

 そして2011年3月11日、村井氏の心を深く抉る事態が発生した。東日本大震災である。村井氏が振り返る。

「実は東日本大震災の1か月ほど前から私は東北地方の地表が異様な変動を見せていることに気づき、巨大地震の前兆ではないかと考えていました。

 しかし当時は、地震予知連絡会という国の機関が『勝手に地震予知という言葉を使って社会を混乱させてはいけない』と注意していたこともあり、公表した場合のリスクを考えて口を閉じました。その結果として多くの犠牲者を生んでしまい、自分は何のために研究していたのかと自問しました。そしてこれから先は、異常に気づいたらたとえ恥をかいても発言しようと心に決めたんです」

 東日本大震災の反省から決意を新たにした村井氏は、気象庁に電話で「地震予測をやりたい」と申し出た。すると担当者はこう答えた。

「いいですよ。ただし役所としては、民間人による予測は“占い”として扱います」

 この時の心境を村井氏はこう振り返る。

「それで結構、と思いました。だったら地震予測の占いをしようじゃないかと開き直りました」

 その後の村井氏の躍進は目を見張るものだ。2013年に地震科学探査機構(JESEA)を立ち上げ、「週刊MEGA地震予測」というメールマガジンの配信を始めた。『週刊ポスト』を皮切りに多くのメディアに登場し、2014年3月に出演したテレビ番組で5日後の伊予灘地震を予測して大きな話題となった。

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