もちろんシニアになってから取得した資格を十分に活かしている人もいる。

 東京都世田谷区在住の渡辺裕之さん(78)は52歳の時にがんを患い。55歳でそれまで勤めていた会社を退職した。その後治療のかいもあって症状が落ち着いたので、60歳になるまでに宅地建物取引士資格や1級建築施工管理技士などの資格を取得したという。

「もともと建築関連の会社にいたから、その分野のことには明るかった。つまり経験があったわけだね。おかげで今でも建築現場で安全管理などの仕事をやらせてもらっていますよ」

 資格を手がかりに次なるステップに進みたいと考えるシニアは多い。ただ、シニアだからこその壁が邪魔をして思うようにキャリアを積めない例が後を絶たない。前出・須田氏は次のように言う。

「仕方のないことですが、シニアの方は年齢が高い分、上から目線になりがちです。さらに資格を持っていたりすると、もっと目線が上がってしまう。それが仇になって新しい職場で孤立してしまうようなことが起こる。実るほど頭を下げるという気持ちを持ち続けることが成功の秘訣なのです」

 資格という大きな実。これを生かすも殺すもその人の気持ち次第なのである。

※週刊ポスト2021年11月12日号

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