スポーツ

江夏豊が明かす王貞治の逆転3ラン マウンドから見えた「王さんの涙」

「いまだにおれは寝るときに王さんから打たれたシーンが毎晩浮かんでいる」

「いまだにおれは寝るときに王さんから打たれたシーンが毎晩浮かんでいる」

 昭和の大投手であり、王貞治と「宿命のライバル対決」を繰り広げてきた江夏豊。さまざまな勝負を挑み、時に大きな一発も浴びてきた江夏が、その対決や王貞治について振り返った。【前後編の後編】

 * * *

王さんの涙

 忘れられないホームランといえば、昭和46年9月15日、甲子園の阪神-巨人24回戦の9回逆転スリーラン。最終回、ランナー二人を塁に置いている場面で、王さんに回ってきた。このとき王さんは3打席まで3三振で、「相当、苦しんでるな」ってマウンド上で思ったくらい調子悪かった。

 キャッチャーのダンプ(辻恭彦)さんがマウンドに2回か3回来て「豊、カーブを放れよ」って念を押して言うのよ。今の王さんにカーブを放れば三振を取れるとわかっていても、王さんから三振を取るときはストレートで取りたい。それがライバルに対しての敬意。カーブで殺すんじゃなしに、真っ直ぐで殺してあげたいと。

 当たり自体は決して良くなく、打った瞬間ライトフライやと思った。ライトの藤井栄治さんがラッキーゾーンの金網によじ登ってグローブの何センチか上をかすめてのホームラン。おれだって現役時代、299本打たれているんだけど、その中でも忘れることのできない思い出だよね。

 ダイヤモンドを回っている王さんが涙を浮かべているのが、マウンド上からわかった。後で王さんからも聞いたけど、泣いていたらしい。王さんも、あのホームランは生涯のうちに忘れることができない1本って言ってる。

 反対に、王さんの調子が良くて、こっちの調子が悪いとき、いろんな手を使った。その中でも忘れられないのが、ノースリーの投球。わざとノースリーに持っていき、4球目にストライクを取って5球目が勝負。自分でそういう配球を考えた。

 ノースリーに持っていったとき、王さんは「豊、調子が良くないな」って思っている。おれにとって王さんはライバルでもあり特別な人だから、普通の勝負ではダメなんだ。いくら調子が悪くても何とかして抑えるために、自分の持っている現状の力をどうやって生かすか、ほぼ毎日考えていた。必ず寝るときに、いろんなことを思い出して頭の中でシミュレーションした。

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン