『オレの愛妻物語』(日本テレビ系)では、大竹しのぶと夫婦役を演じた(写真/女性セブン写真部)
この家出は、その後の水谷をつくる、大きな出来事となる。
「何か、劇的な出来事があって家出をしたわけではなく、自分探しといったところだと思いますね。でも、帰ってから、周囲の人に『なんか変わったね』と言われたと、音楽番組で語っていたことがありました。人生を考える上でいい機会になったのではないでしょうか」
自分探しの旅から戻り、19才となった水谷は、知り合いのプロデューサーから「ちょうど19才の役を探している」と声をかけられ、収入のいいアルバイトという感覚で、俳優の仕事を再開する。
マカロニと対峙する犯人役にぴったり
俳優に戻った水谷は学園ドラマに出演。1960年代後半から1970年代は学園ドラマのブーム全盛期。数々の学園ドラマが制作されていた。水谷は『炎の青春』(1969年/日本テレビ系)で優等生役。その後、『飛び出せ!青春』(日本テレビ系)ではカンニングに手を染める生徒役を、『泣くな青春』(フジテレビ系)では、不良のリーダー役を演じている。
これらの役に目を留めたのが、元日本テレビプロデューサーの岡田晋吉さんだ。岡田さんは、当時の水谷の姿を次のように振り返る。
「『炎の青春』と『飛び出せ!青春』に出ている豊を見て、10代の若者が持つ発散できないようなイライラ感を表現するのがうまいな、と思いました」(岡田さん・以下同)
当時、『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)の企画に携わっていた岡田さんは、水谷を犯人役に抜擢する。
「『太陽にほえろ!』の第1話はショーケン(萩原健一さん・享年68)が演じるマカロニ刑事の登場シーンから始まります。
マカロニは、ピストルを撃ちたくて刑事になったような男で、刑事になっていなければ、犯人になっていたかもしれないという、危うい設定でした。マカロニと対峙し、そのキャラクターを浮き彫りにする犯人役には、豊がぴったりだと思ったのです」
岡田さんの予想は的中。2人の息はぴったりだった。
「クライマックスシーンは印象的でしたね。後楽園球場で犯人役の豊を、マカロニ刑事のショーケンが走って追いかけるのですが、観客席は広くて段差があるので、途中で休んだり、いい加減に走っても編集でうまくつなぐことができるのですが、2人とも全力疾走!
懸命に走る彼らを見て、『このドラマは当たる!』と、私は確信したのです」