ビジネス

『世界「失敗」製品図鑑』著者が示す成長への作法は「戦犯探しをしないこと」

有名企業の20の失敗事例を徹底解説した荒木博行さん。通例を覆す新たな視点も提示した

有名企業の20の失敗事例を徹底解説した荒木博行さん。通例を覆す新たな視点も提示した

「失敗は成功の母」と昔から言うが、実際のところ巷にあふれているのは成功者のストーリーである。だからこそ、「失敗事例」を集めたこの本が人気なのだろう。株式会社学びデザイン代表取締役の荒木博行氏は、『世界「失敗」製品図鑑 「攻めた失敗」20例でわかる成功への近道』(日経BP)で、アマゾン、アップル、ネットフリックス、ソニー、トヨタなど、有名企業の20の失敗事例を徹底解説した。荒木氏の深く前向きな分析は、失敗から学ぶ大切さとともに、失敗する勇気や、失敗をポジティブに受け止める環境・文化の大切さを教えてくれる。失敗を成功につなげるために必要なこととは──荒木氏に話を伺った。

※ ※ ※

GU、カローラ……あのヒット商品の前にあった失敗

──アマゾンの「ファイアフォン」、アップルの「ニュートン」、コカ・コーラの「ニュー・コーク」、ナイキのゴルフ用具事業……、聞き覚えのある製品やサービスの失敗の顛末は、学びがあると同時に、ストーリーとして興味深いものばかりでした。「失敗」に注目されたのはなぜでしょう。

荒木:我々は成功者の語るストーリーをよく聞きます。それはそれで非常に示唆に富む話ではあるのですが、成功者が語ると、何でも正当化されてしまう側面はあるんです。朝ごはんは何を食べているとか、本当に成功に関係あるの? と思うような話を含めて、成功者が語ることで、意味を持ってしまったりする。だから僕は、失敗事例にこそ、学ぶべきヒントがあるんじゃないかと感じていました。

 ただ、失敗事例って世の中にあまり出ていないんです。なぜかといえば答えはシンプルで、情報が少ないから。誰しも己の失敗を語りたくないじゃないですか。だからこそ、こういう本を通じて、失敗を前向きな学びの題材にしてもらえたら、と考えました。

──「あのユニクロが野菜業界に参入!」と、ビジネス界に大きな衝撃を与えるも、1年半で撤退したファーストリテイリングの野菜事業・スキップ。しかしこの失敗が、現在のGU(ジーユー)の成功につながった。失敗なくして成功なし、を痛感します。

荒木:必ずしもそういう事例ばかりではないんですが、その後のビジネスにつながった失敗事例を中心に選んでいます。

 ただ、失敗の意味合いやインパクトは、業界や産業によって違います。たとえば医療業界では失敗は避けるべきことですが、スタートアップ企業が失敗しても、それほどではないですよね。だから「どんどん失敗しようぜ」とは一概には言えません。ただ一つ言えるのは、変化の激しい社会において、1年間で12個プロダクトを出せる会社と、1個しか出せない会社があったとしたら、1個しか出せない会社は相当リスクが高いということ。対して12個出せる会社は、顧客から手痛いフィードバックを受けながら、徐々に顧客のムービングターゲット(動く標的)を捉えることができるわけです。

関連記事

トピックス

山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン