安全神話が崩壊したご時世では、考え方を変える必要もある。うかつな「正義感」が命を奪うきっかけとなりやすい。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平さんはいう。
「自暴自棄になって何かやってやろうと思っている人間は、何が引き金になるかわかりません。おかしな行動を注意したら、相手を刺激する結果となり反撃を食らう可能性があります。
実際に、京王線の事件では、犯人がリュックサックから殺虫剤やナイフを取り出したことに対し、『何をやっているんだ』と注意した男性が刺されたと報じられています。たとえ注意した本人は難を逃れても、逆上した犯人が周囲にいる別の人を攻撃するかもしれない。怪しい相手からは距離を置き、相手をジロジロと見ることも避けるべきです」(小川さん)
近年、事件を報じるテレビニュースでは、現場に居合わせた乗客がスマホで撮影した犯行現場の様子が流されることが目につく。小川さんは「動画撮影も犯人を刺激する行為です」と警鐘を鳴らす。
「いまはスマホで誰でも簡単に動画を撮影できますが、撮られていることがわかったら、犯人が逆上する可能性は充分ある。今後は、動画を撮影していて被害に遭うケースが出てくるのではないかと感じます。動画を撮る暇があったら高齢者や子供の避難をサポートしてほしい」
護身用の防犯グッズも市販されているが、過信は禁物。テロ対策に詳しい公共政策調査会研究センター長の板橋功さんは「防犯グッズは使いどころが難しい」と語る。
「防犯用の催涙スプレーで犯人が逆上して、矛先が自分に向かう危険もある。また、犯人ではない相手に誤って使ってしまうと、傷害罪に問われることもあります。切りつけに強い防刃バッグを普段使いすることは悪くはありませんが、万一のときに盾として正確に使えるかどうかはわからない。やはりいちばんは、相手の攻撃を受けないように早く逃げることです」
※女性セブン2021年12月16日号