「ISUは羽生選手が最初の金メダルを獲得した2014年のソチ五輪の後にもルール改正を行い、名前をコールされてからスタート位置に着くまでの時間を、それまでの60秒以内から30秒以内に短縮しました。羽生選手はルーティンを行ってきっちり46秒かけていたので、新ルールを聞いた瞬間、絶句したそうです。
さらに2017~2018年シーズンまで『15点』だった4回転アクセルの基礎点が、羽生選手が挑戦を公言し始めた2020年になぜか2.5点も減点された。いずれも“王者へのいやがらせでは”と囁かれました」(前出・フィギュアスケート関係者)
今回、ロシアが提案したという「演技構成点」から「つなぎ」と「音楽の解釈」を外すという改正案が、羽生に与えるマイナスの影響はそれ以上だ。
「羽生選手は要素のつなぎ方や曲の解釈を重視し、演技構成点をすごく考えたプログラムを組んでいます。それだけ体力を消耗する振り付けにもなっている。
一方、ネイサン選手はつなぎが不充分で、難易度の高いジャンプの前は楽な振り付けになっている箇所がいくつもあります。これまでの採点でも、“羽生選手の演技構成はもっと評価されるべき”と感じてきました。もしルール改正が行われたら、羽生選手のよさ、フィギュアスケートのよさが失われてしまいかねません」(前出・スケート連盟関係者)
ロシアはなぜこのような提案を行ったのだろうか。
「ロシアスケート連盟の顧問を務めているのは、かつて荒川選手や浅田選手のほか、世界の名だたる選手を指導し、“金メダルメーカー”と称されたタチアナ・タラソワさんです。彼女はISUに対しても大きな発言力を持っていますが、今回、彼女は演技構成点の構成要素を5から3に減らすことに賛成しています」(前出・フィギュアスケート関係者)
現在、男子では羽生以外ではネイサンや宇野、鍵山優真(18才)が最有力だが、女子ではロシアの若手選手が次々に台頭し、トップ3を独占するなど圧倒的な力を誇っている。
「かつて、浅田真央選手に『恋をしてでも表現力を磨きなさい!』と指導するほど、表現力を重要視していたタラソワさんがこのような提案に賛成するとは、ジャンプに強いロシアの女子選手の優位性を確実なものにしなければいけないという焦りと、世代交代を促し、羽生選手に暗に引退を迫るものなのかもしれません。
羽生選手の五輪出場が不透明ななか、フィギュアスケート界の未来に関しても不穏な動き。彼のモチベーションに大きな影響をもたらす可能性は否定できない」(前出・フィギュアスケート関係者)
スケート界の“黒幕”ともいえる存在に逆境に立たされている羽生。ルール変更の協議は、五輪後の2022年の6月から行われる。
※女性セブン2022年1月1日号