『カムカムエヴリバディ』ヒロインの上白石萌音
世良、宇崎、ふたりに共通しているのは、まず、声がいいこと。朗々と語るのではなく、ぽつりぽつりと語る声がよく響く。美声というより、人生が乗っかったような声。定一は、自分の息子・健一が出征したまま音沙汰なしで、「飲まずにやっとれるか」「なんの因果じゃろうのう、稔を殺した、健一を殺したかもしれん国の音楽を、わしゃ、今日もかけとる」とつぶやく。
34年間連れ添った孝代を亡くした村野は、墓石の下に入ろうとして親戚に止められたと話す。矛盾や無茶を抱え続け、悲しみに満ちた親父の心の叫び。こうした語りの声は、作ろうとしてできるものじゃない。
もうひとつ共通しているのは、いい感じのしわだ。マイクを前にした定一の顔にも、白髪でしょんぼりする村野の顔にも、口元に深いしわが目立つ。私は勝手に「歌いしわ」と名付けているが、長く歌い続けている男のしわには、魅力があるのだ。
世良は1978年、世良公則&ツイストとして『あんたのバラード』で、宇崎は1975年、ダウン・タウン・ブキウギ・バンドとして『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』で、紅白歌合戦に初出場している。いろいろな特別枠もできている最近の紅白ならば、NHKのドラマに貢献している親父枠というのができてもいい気がする。もちろん、今、BSプレミアムで『剣樹抄~光圀公と俺』と『生きて、ふたたび 保護司・深谷善輔』とふたつのドラマでいいしわを見せている舘ひろしも含めて。若いファンにも届くものがたくさんあるはずだ。
