事件にまつわるさまざまなヒントが〈ハッシュタグ〉によって見えてくる点も、本作の現代的な一面であり、読みどころのひとつだ。三ツ矢の捜査における着眼点の鋭さには、舌を巻くしかない。
「こういう事件が起きて、こういう人が出てくるとか、いつもその程度のプロットしかない状態で書き始めるので、どう解決するかは『三ツ矢、頼んだからね』ってほぼ丸投げといいますか。彼がどうやって真犯人に辿り着き、謎を解くのかも私は知らないんです(笑)。
きっと人物を一人一人、丁寧に描いていけば着地点は見えてくるはずだという、根拠のない楽観があって、幸いその書き方でも迷宮入りはしていません。あともう1作くらいは三ツ矢のお世話になるかな。なかなか信じていただけないんですが、本当にこれって、彼が解決しているんで(笑)」
クリスマスイブの夜に遺体で発見された“彼女”が最後に何を見、何を思って死んでいったかを、まさき氏は自身の死生観やありったけの思いを込めて描き上げた。衝撃的な事件の真相以上にドラマチックなその人生の全貌を、ぜひ見届けていただきたい。
【プロフィール】
まさき・としか/1965年東京生まれ。0~2歳、26~28歳、35~40歳、42~44歳を東京、その他は札幌で過ごし、現在も札幌在住。ライター職の傍ら同人誌で活動し、2007年「散る咲く巡る」で第41回北海道新聞文学賞を受賞。著書に『熊金家のひとり娘』『完璧な母親』『祝福の子供』『屑の結晶』等。また三ツ矢&岳斗コンビの初登場作『あの日、君は何をした』は2020年啓文堂書店文庫大賞第1位に輝くなどベストセラーに。本書はシリーズ第2弾。162.5cm、O型。
構成/橋本紀子 撮影/国府田利光
※週刊ポスト2021年12月24日号