少しずつ靖子さんを亡くした悲しみや喪失感から立ち直っていき、ここ最近は日々を楽しむ余裕が生まれてきたという。その一つが靖子さんの影響で始めた「生前整理」だ。

「女房は亡くなる前に、家族に迷惑をかけないよう遺品ひとつひとつに名札をつけて『誰々に差し上げてください』と整理していました。僕があまりに整理ができないからかもしれません(苦笑)。いま、僕は女房を見習って思い出の品を整理しています。

 終活というつもりはなく、あくまで生きているうちに整理したいという気持ちでアクセサリーや時計、写真などを子供たちに分け与えています。ただ、洋服だけは子供とサイズが合わないので困るね。女房は亡くなる前に100通りの組み合わせを考えてくれていて、いまでもそれに従って洋服を選んで着ていますけどね」

 思い出の品を整理することは、靖子さんと過ごした日々を忘れていくことにも見えるが、「そうではない」とみの氏。

「女房のことを忘れることはないし、忘れようとしているわけではありません。形見分けのように仰々しくないので、欲しい人がいれば差し上げたいと思ってやっている。あくまでも自然体。

 でもいまだに女房がいない生活は慣れなくて、独り言で女房に話しかけちゃう。コロナで機会は少なくなっているけど、たまに食事に行くと、そろそろ女房から“帰ってこい”と電話がかかってくる気がするし、“女房離れ”は永久にできないかな。これも自然に任せて、“女房との余韻”を楽しむようになりました。日々を少しでも楽しく生きることが、先に逝った人への供養だと思うようになりましたね」

※週刊ポスト2021年12月24日号

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