「私が幼かった時代は東京の下町でも鍵なんかかけて出かけなかったし、留守のときにもお隣のおばちゃんに“ちょっと、見といてー”と声でもかければ問題なかった。それがいまは隣に住んでいる人の顔もわからないし、近所に空き巣が入ったことすら気づかない地域社会になってしまいましたよね。隣人への関心が希薄になりましたし、家族にしても、離れていれば亡くなってから1か月も気づかれないことがあったりして……。
昔の近所づきあいはおせっかいな部分もありましたけど、そのぶん関係が密で、地域で助け合いができていました。“情報提供をしてください”とわざわざ呼びかけなくても、地元の美容院に行けば、ご近所の様子はだいたい把握できたでしょう?(笑い)
女性たちのコミュニティーで情報を共有していたんですね。『あのお宅はおじいちゃんがひとり暮らしで心配だ』『最近、お隣のおばあちゃんの様子がおかしい』など、皆さんの小さなおせっかいが誰かを救うかもしれない。家族の絆に加えて地域で共有することも、犯罪の抑止になると思います」
夫の杉は、伍代から見ても特殊詐欺撲滅について24時間といっていいほど考えていると感じているという。
「特殊詐欺の手口が多様化するにつれ、その対処と注意喚起に力を注いできました。ただ、根絶するためにはどうしても犯罪を元から断たないといけません。受け子など末端の犯罪は刑期も短いので、詐欺組織のピラミッドの“てっぺん”へ到達できるよう、知恵を尽くして、しっかりと対策をしていきたい。必ず成果が出ると信じています」
詐欺組織は、医療費や税金が戻ってくると語る還付金詐欺や、マイナンバー制度に便乗して手数料の振り込みや個人情報の提供を求める詐欺など、あの手この手で高齢者を付け狙う。警視庁によると東京都の被害件数、被害額ともに10月末現在で2020年の同じ時期と比べて増加しているという。
安心して新年を迎えるべく、この年末は大切な家族をいま一度気にかけてほしい。
※女性セブン2022年1月6・13日号