ビジネス

商社マンが明かす世界食料争奪戦の現場 日本がこのままでは「第二の敗戦」も

東京湾をゆくコンテナ船。新型コロナウイルスの世界的流行が始まって以降、世界でコンテナの奪い合いが起きている(AFP=時事)

東京湾をゆくコンテナ船。新型コロナウイルスの世界的流行が始まって以降、世界でコンテナの奪い合いが起きている(イメージ、AFP=時事)

 日本は70年以上も戦争と関わらずにきたはずだった。しかしその日本がいま、世界で激しい「食料戦争」の渦中にある。俳人で著作家の日野百草氏が、「国の通貨が安いまま戦うのは厳しい」と焦る商社マンに、牛肉を中心とした日本の「買い負け」事情を聞いた。

 * * *
「どこより高い金を出せば買えますよ、ただ買い負けているだけです」

 食品専門商社のA氏(40代)に話を伺う。以前、彼がこの国の食料問題に対する危機感を訴えた『憂国の商社マンが明かす「日本、買い負け」の現実 肉も魚も油も豆も中国に流れる』は思わぬ反響を呼んだ。筆者もそこまでとは思っていなかったのだが、現実に食肉や魚介類に次々と値上げ、不足のニュースが続いている。ただ一人の話だが、その一人の肌感は現に日本の危機を象徴している。多くの他国と「戦う」企業戦士も同様だろう。

「それと船ですね。こちらは取り負け、日本に寄ってもらえない」

 その食料を運ぶコンテナ船もコンテナそのものも不足している。食料争奪戦が「戦争」だとしたら、いまはまさに「戦時下」だ。

「値上げはさらに続くでしょう。いつ相場(食肉、穀物)が落ち着くかわからない」

 個別の値上げを見れば、魚介類でいえばウニ、イクラ、タラバガニ、ズワイガニ、数の子など、いずれも最高値かそれに近い値上がりを記録している。大手鮮魚専門店のスタッフいわく「あるだけマシ」とのことで、値段は高くても手に入れば御の字だという。

「魚介は高くてよければ国内産でリカバリーできます。でも肉や穀物は厳しい」

 日本の食料自給率(カロリーベース)は本当に低い。コロナ前の2018年の農水省データでアメリカ132%、フランス125%、ドイツ86%、イギリス65%、イタリア60%に対して日本は37%。1980年代までは50%以上を維持してきたのに30年間ずっと低水準、30年間変わらない日本の平均賃金と同じ様相だ。

「フランスは自給率を上げるために努力してきましたからね。食料を掴まれるのは命を握られるのと同じって連中はわかっているのでしょう。私も同じ考えです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
国仲涼子が『ちゅらさん』出演当時の思い出を振り返る
国仲涼子が語る“田中好子さんの思い出”と“相撲への愛” 『ちゅらさん』母娘の絆から始まった相撲部屋通い「体があたる時の音がたまらない」
週刊ポスト
「運転免許証偽造」を謳う中国系業者たちの実態とは
《料金は1枚1万円で即発送可能》中国人観光客向け「運転免許証偽造」を謳う中国系業者に接触、本物との違いが判別できない精巧な仕上がり レンタカー業者も「見破るのは困難」
週刊ポスト
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“最もクレイジーな乱倫パーティー”を予告した金髪美女インフルエンサー(26)が「卒業旅行中の18歳以上の青少年」を狙いオーストラリアに再上陸か
NEWSポストセブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン