国内

元官僚が予測する2022年の政治 「役所任せ」岸田政権の緊急時対応に懸念

元官僚の3氏は岸田政権をどう見る?(時事通信フォト)

元官僚の3氏は岸田政権をどう見る?(時事通信フォト)

「聞く力」を標榜する岸田政権の誕生で、世界に冠たるニッポン官僚は復活し、国の危機を乗り越えることができるのか。元官僚で政治とも縁深い寺脇研(元文科官僚)、原英史(元経産官僚)、豊田真由子(元厚労官僚、元衆院議員)の3氏が激論を交わした。【前後編の前編】

原:岸田内閣は始まったばかりでまだ評価できる段階ではないけれど、1990年代の橋本政権の頃から官僚主導への反省で政治主導が進み、それが民主党政権の頃から“何でも政治で決めればいい”との方向にちょっと行きすぎて、今度は岸田内閣でまた“官僚に任せればいい”と昭和の時代に揺り戻っているように見える。両極端に振れすぎているのは問題じゃないかと。

寺脇:最近までSNSには霞が関の官僚の書き込みが溢れかえっていた。夜遅くまで働かされ、中身のない仕事を毎日毎日やらされていると。明らかに正常な形ではなかった。政治主導が行きすぎたんです。

原:だから今は役所の人たちは大喜びですよ。

豊田:そうですよね。この天国が続いてくれと。

原:官僚は、こんな素晴らしい政権ができて「私たちで全部決めます」みたいになっている。ただ、オミクロン株の水際対策での騒動(国交省航空局の官僚が独断で航空会社に日本到着便の新規予約停止を要請した)はさすがにバカすぎる。昭和の時代にもあんなことはなかった。国を挙げてコロナ対策をやっている中で、官邸に上げなくては駄目でしょう。国交大臣にも相談していなかったというから、これは劣化が激しいなと。

寺脇:ボケちゃったんじゃないの、この10年で。

豊田:悪意があったわけではないと思う。やっぱり官僚にとって“物言えば唇寒し”の時代が長かったので。かつては政治と官僚の間にちゃんと信頼関係があって私たちの世代でも大臣室で自由闊達に意見を言えた。けれど政が官を無理やり抑え込むようになって、コミュニケーションが取りにくくなった。

 日本の官僚組織は三権分立で、行政の公正中立性を保つためにも政が官の人事に首を突っ込まないというのが暗黙のルールだったけれども、行きすぎた政治主導、さらに内閣人事局の創設でそのバランスを壊してしまった。能力が高くても政治に忖度しないと生き残れない先輩たちを見ていると、中堅若手は動けなくなっちゃいますよね。サボタージュというより身動きがとれない。

原:豊田さん、僕は内閣人事局の創設に直接かかわった。

豊田:あっ、先輩すみません。

原:全然(笑)。なんで内閣人事局をつくろうとしたかというと、その官僚がどれだけ実績をあげたか、能力があるかの人事評価を審査する組織をつくって、人事権を持つ大臣が恣意的に人事をできないようにするためでした。だけど、第2次安倍政権で発足した内閣人事局は、人事評価を真面目にやらなかった。結果として、官邸に忖度した人が偉くなれるんじゃないかと勘違いして、皆が忖度を始めた。今の内閣人事局が駄目なのはまともに仕事をせずに政治に人事を委ねてしまったことです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン