スポーツ

マンハッタンカフェ、アパパネ…蛯名正義氏が名馬に学んだ個性の活かし方

2020年に調教師試験に合格した名手・蛯名正義氏

2020年に調教師試験に合格した名手・蛯名正義氏

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏が、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートする。蛯名氏による週刊ポスト連載『エビジョー厩舎』から、マンハッタンカフェ、アパパネ、マツリダゴッホなど名馬に教えられた「個性」の活かし方についてお届けする。

 * * *
 小島太厩舎のマンハッタンカフェではGIを3回も勝たせてもらいました。3000mの菊花賞、2500mの有馬記念、3200mの天皇賞(春)ということで、ステイヤーかと思われるかもしれませんが、2000mでもいい成績を残すことができたと思います。ただ、3歳春は輸送するとすぐに体重が減ってしまう馬だった。弥生賞がマイナス20キロで4着。その次阪神に行ったらマイナス16キロ。このときは11着でした。

 それで春を全部休んで北海道に放牧に出し、その後札幌に滞在して競馬を使った。4か月ぶりに札幌で走った時はプラス46キロ(笑)。でも、全然太い感じはしませんでした。2連勝して秋を迎え、折り合いに心配がないということで、じゃあ菊花賞へ行きましょう、と。輸送さえ克服していれば、春のクラシックもいいところまでいっていたと思います。それでも、小島太先生は秋には絶対よくなるからとおっしゃって休ませました。

 アパパネに初めて乗ったのは2歳7月の福島。このときは3着で、もうちょっと全体的にパワーアップしてほしいですねと話しました。厩舎の方でも一息入れたらいいんじゃないかと思っていたようで、夏は放牧に出されました。

 10月に戻ってきて東京に出てきたときは、もう別馬でした。三冠とれるぞ、とまではいかなかったけれど、未勝利戦で強い勝ち方をして、次の500万(1勝クラス)では、もっと強くなっていて。もしかしたらこの馬相当強いなと思うようになった。阪神ジュベナイルフィリーズを勝った時は、もう順調に行ったら桜花賞勝てるな、と。

 僕はアパパネのお母さんのソルティビッドにも乗っていたんです。アメリカ産馬ですごくスピードがあったからアパパネも短距離馬かなと思っていたんですけれど、穏やかな馬だったので長めの距離でデビューしたのがよかった。

 三冠を獲って、ヴィクトリアマイルも勝っているけれど、トライアルや前哨戦では負けています。それは、目一杯仕上げてレースに出ると全力で走り切ってしまうから。国枝栄厩舎では本番がピークになるように仕上げていったんです。

 国枝厩舎といえばマツリダゴッホで有馬記念を勝たせてもらいました。本当に賢い馬で、こちらが見透かされている感じすらありました。中山競馬場が大好きで、勝手に加速していきます(笑)。オールカマーを3連覇しているように、国枝先生も中山に合わせて使っていました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン