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シリーズ第2弾『黛家の兄弟』発表の砂原浩太朗氏「今いる自分だけがまこと」

砂原浩太朗氏が新作について語る

砂原浩太朗氏が新作について語る

【著者インタビュー】砂原浩太朗氏/『黛家の兄弟』/講談社/1980円

 舞台は前回の直木賞候補作『高瀬庄左衛門御留書』に引き続き、日本海沿いにあると思しき架空の〈神山藩〉。シリーズ第2弾『黛家の兄弟』では、代々筆頭家老を務める黛家の三兄弟、長男〈栄之丞〉、次男〈壮十郎〉、三男〈新三郎〉それぞれの命運と絆が、主に新三郎の視点で語られてゆく。

 前作で幅広い層の読者を獲得し、「これぞ令和の時代小説」と注目された著者・砂原浩太朗氏は現在52歳。中学生の頃から藤沢周平や『三国志』を愛読し、「人間をより鮮やかに描ける舞台として、時代小説を選んだ」と言う。

「例えば現代で人が殺されると、警察が来てDNAも調べるとか、本題でなくても書かなければいけないことがたくさんありますよね。一方で、『罪と罰』のような古典文学には、指紋の発見以降は成り立たない話も多いですが、作品の価値が損なわれるわけではない。僕の場合、書きたいテーマを鮮明に打ち出すには、時代小説というジャンルが合っているのかなと思います」

 物語は藩主の信頼も厚い父〈清左衛門〉が50を迎え、代替わりを考え始めた矢先、花見客で賑わう鹿ノ子堤で三兄弟が質の悪い酔客と喧嘩になりかけた、新三郎17歳の春の出来事から始まる。

 この時、新三郎の傍には道場仲間の〈由利圭蔵〉がいた。黛三千石、由利二十石と家格は違うが、肩身の狭い三男同士、2人は妙に気が合った。その圭蔵があまりの美貌に頬を赤らめたのが、同じ場所で花見をしていた大目付〈黒沢織部正〉のひとり娘〈りく〉だ。

 新三郎は、栄之丞から文を託されたため、りくと兄の間には何らかの通い合いがあると感じている。ところが、兄には藩主の息女と、そして新三郎には、こともあろうに、当のりくとの縁談が舞い込んで……。結局、新三郎は圭蔵を側近として召し抱えた上で黒沢家に婿入りするのだが、本人たちの思いとは別の次元で家というものが営まれる時代でも、決して失うものばかりではない、というように、終始フェアな視線を注ごうとする著者の姿勢がいい。

「以前、高名な映画監督が人間は何も選べない、人生というのは不自由なものなんだとおっしゃっているのを読んだことがあります。たしかに、生きることって、制約だらけですよね。一見、自由に見える現代でも、当然、自分の親も生まれる場所も選べないわけですし。

 時代小説は制限が多いように見えますが、そもそも人間は今も昔もずっと不自由なものですから、それが分かりやすい形で表れているだけだと思うんです。

 ただ、それでも幸せや生き甲斐といったものを求めてしまうのも人間ですよね。それこそ望むと望まざるとに拘わらず婿入りし、舅から大目付の心得を伝授される新三郎のように、不自由を受け入れた上で異なる世代や世の中と良好な関係を築けたりと、得るものも必ずあるはずですから」

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