有田哲平がMCを務める『世界で一番怖い答え』(番組公式HPより)
昭和の夏、怖い話やホラーはテレビ番組の定番だった。平成に移ってからはそうした番組は減っていったが、令和の今、再び盛り上がりを見せている。その背景についてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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「あれ?この番組ってレギュラー放送だったっけ?」
このところ有田哲平さんがMCを務める『世界で一番怖い答え』(フジテレビ系)が月曜23時台に放送されると、そのような声がネット上にあがっていました。
同番組は“恐怖”がテーマのクイズ番組。カルト的な人気を誇る『放送禁止』シリーズ(フジテレビ系)のホラー巧者・長江俊和監督が監修を務めることで、2019年8月の初回放送時から局地的な人気を集めていました。
当初は深夜1・2時台の放送だったものの、昨年から23時台に昇格。今年5月には2週連続、今夏には4週連続で放送されるなど人気は高まる一方で、「好き嫌いがはっきり分かれる」と言われる怖い話の番組ながらレギュラー化を期待する声もあります。
特筆すべきはその長江監督が現在放送中の恋愛ホラーサスペンスドラマ『恋愛禁止』(読売テレビ・日本テレビ系)でも原作・監督を務めていること。ホラーの連ドラは少ないだけに、同作は放送前から業界内では驚きの声があがっていました。
また、16日には『ほんとにあった怖い話』(フジテレビ系)も放送。同番組は20周年の2019年から3年連続で秋の10月に放送していましたが、それ以降は8月に戻り、お盆の前後に放送される特番として定番化しています。
今夏はそれ以外でも、『真夏の怪奇ファイル 見えてしまった…招かれざるモノたち』(テレビ東京系)や『口を揃えた怖い話』(TBS系)などが放送されたほか、『マツコの知らない世界』(TBS系)でも「新・お化け屋敷の世界」を特集。さらにTVerでも「ホラー・年伝説2025特集」として、『TXQフィクション』(テレビ東京系)、『稲川淳二の怪談グランプリ2025~全国最恐怪談師決定戦~』『ヒロシの心霊キャンプ』などが配信されました。
昭和時代、怖い話やホラーは夏の定番でしたが、なぜ令和の今、再びテレビ番組として見直されているのでしょうか。
YouTubeの怪談から復活の狼煙
昭和の時代から夏は心霊番組、ホラー映画、怪談イベントなどがそろう季節。「お盆には死者の霊魂が帰ってくる」と言われ、祖先の霊魂を迎えて供養するだけでなく、芝居などで怨霊の無念を語ることで鎮魂してきた歴史があります。
時代は昭和から平成に移り、これらのコンテンツを取り巻く状況が徐々に変化。これらが以前ほど稼げるコンテンツではなくなり、マニア向けのものになってひっそりと放送・公開・開催されるものに変わりました。
しかし、令和に入ってから、主にネットを中心に怖い話のブームが復活。YouTubeでは多くの怪談チャンネルが人気を集め、怪談イベント、ホラー小説やドラマなども話題となっています。特に怪談師はキャラクターもトークのバリエーションも多彩であるなど質、量ともに進化。心霊に限らず、いかにもありそうな都市伝説や陰謀論を巧みに語ったり、人間のリアルな恐ろしさで怖がらせたりなどの話術でファンを獲得しています。
映像でも、前述した長江監督が得意なフェイクドキュメンタリーを筆頭に、緻密な計算に基づく作品が多く、その上でクスリと笑わせるシーンを盛り込むなど、エンタメとしての幅が格段にアップ。昭和時代のブームを知らない若年層のファン獲得につなげています。
そのポジティブなムードはテレビ業界にも波及。冒頭にあげた『世界で一番怖い答え』はクイズ形式を採り入れてエンタメ性をプラスしたほか、有田哲平さんをMCに据えて笑いを交えるなど、テレビならではの構成・演出で、怖い話の再ブームをさらに押し上げるようなコンテンツになりつつあります。