芸能

宮沢りえは生粋の演劇人 アングラ作品でテレビでは見せない熱量を発揮

義時の継母を演じる

舞台上での宮沢りえの魅力とは?

 大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)や『真犯人フラグ』(日本テレビ系)に加え、1月7日公開の映画『決戦は金曜日』での好演も話題の宮沢りえ(48才)。近年、テレビや映画などに精力的に出演する宮沢だが、彼女が座長を務めた舞台『泥人魚』が昨年末、大盛況のうちに幕を閉じたことは一般にはあまり知られていない。テレビでは見られない舞台上での宮沢の魅力について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。

 * * *
 昨年12月、東京・Bunkamuraシアターコクーンにて上演された舞台『泥人魚』。俗に“アングラ演劇”と呼ばれる本作は、非常に難解な作品ではあるものの、その難解さをも超えて惹きつけられる力があったように思う。SNSなどの口コミでは、東京・渋谷の瀟洒な空間での上演でありながら、本作の凄まじい“熱気”を体感した人々の興奮の声が多く寄せられた。その最大の理由の1つが、中心に立つ宮沢の存在だ。多くの観客が感じた“熱気”を生み出すことに、彼女は大きく貢献していた。

 本作は、アンダーグラウンド演劇の第一人者の1人である唐十郎(81才)率いる「劇団唐組」により2003年に初演され、「第五十五回読売文学賞 戯曲・シナリオ賞」、「第三十八回紀伊國屋演劇賞(個人賞)」などを受賞した戯曲の傑作。劇団・新宿梁山泊主宰の金守珍(67才)が演出を務め、初演以来18年ぶりに上演された。長崎県諫早市にある通称“ギロチン堤防”の問題をモチーフとしながらも、観客の想像を掻き立てる詩情あふれる演劇作品となっていた。

 あらすじはこうだ。かつて諫早漁港で働いていた青年・蛍一(磯村勇斗)。干拓事業のため、諫早湾の内海と外海を分断する“ギロチン堤防”の登場によって不漁が続き、絶望した彼は港町を去った。現在は都会の片隅にあるブリキ店で、まだらボケの店主と日々を過ごしている。そんなある日、少女時代に海で漁師に助けられ、その養女となったやすみ(宮沢りえ)という、「ヒトか魚か分からぬコ」と呼ばれる女が蛍一の元へとやってくる。

 アングラ演劇への出演は初挑戦となった磯村勇斗(29才)が、蛍一役として難解な物語世界へと観客を誘うナビゲーター的役割を担ったほか、元タカラジェンヌである愛希れいか(30才)、大ベテランの風間杜夫(72才)らをはじめとする多くの演劇人が脇を固めた。彼らに囲まれ、奇想天外な物語を牽引し圧倒的な熱を放ち続けたのが座長の宮沢りえなのだ。

 意外と知らない人も多いようだが、宮沢といえば演劇界で多大な功績を残してきた存在である。今年は主要キャストとして参加した映画『決戦は日曜日』が封切られたばかりで、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にも出演。昨年12月に放送された『女系家族』(テレビ朝日系)での演技も記憶に新しく、故・蜷川幸雄(享年80)や野田秀樹(66才)など、日本を代表する演出家の作品にもコンスタントに出演を重ねてきた。これまで数々の演劇賞を受賞しており、“舞台俳優”、“演劇人”の顔を持っているのだ。声を柔軟に操る様子や、身振りだけで何かを伝える技術は、多くの映像作品にも見られるはずである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン