(写真/Getty Images)

小さい頃から「本の虫」になる子も(写真/Getty Images)

多くの才能と一緒に困難も多く与えられた

 竹中さんは、同志社大学を卒業後、一般企業に就職する。しかし、空気を読むことが苦手な竹中さんは、高圧的な上司との関係に疲れ果てて心身のバランスを崩し、2年間、ひきこもり生活を余儀なくされたという。

「“ひどい上司だ”と思うのではなく、“自分はダメなんだ”と、ずっと自分自身を責めていました。学校でも家庭でも会社でも居場所を見つけられたことがなく“こんなに空気が読めないのは、発達障害かもしれない”と思い詰めて、検査を受けることにしました」(竹中さん・以下同)

 当時、竹中さんは30才。検査の結果、発達障害やアスペルガー症候群などではなく、IQ132のギフテッドだということが判明した。

「ギフテッドだとわかると、これまでのさまざまなことが、自分を構成するひとつの特性だと思えるようになりました。私は、社会の役に立たないダメな人間などではなかった。

 いまは、子供や若者のカウンセリングや支援の仕事に、とてもやりがいを感じています。転職しても3年と続かなかったのに、いまの仕事は6年目。相談者を受け入れているようで、私が彼らに受け入れてもらっているのかもしれません」

 日本人史上最高のIQ188(※「sd24」での表記による)のギフテッドである太田三砂貴(みさき)さんは、高校を卒業後、両親のすすめでIT系の専門学校に進学した。

「両親から“数学や物理よりも役に立つことを学んでみたら?”と言われたからです。1年でカリキュラムをマスターしてしまったので、自主退学しました。

 でも、スキルが身についていても、専門学校中退だと、就職や海外の大学へのエントリーが難しかった。結局、コールセンターなどで働いたりした後、縁あっていまの琉球大学に入りました。いまは好きなことを学び、絵や音楽などの創作活動も評価していただけて、やっと本当に楽しいことができている。海外の大学院への進学も視野に入れています」(太田さん・以下同)

 常人離れした知能ゆえに、周囲の理解に恵まれず苦しんだ太田さんだったが、いまでは「ギフトと一緒に、困難も与えられただけ。乗り越えれば人より成長できる」と語る。

 持って生まれた得手不得手があるのは、どんな人も同じ。それに気づいたときに初めて、自分らしい生き方を手に入れられるのかもしれない。

「小さい頃、両親が科学博物館のプラネタリウムに連れて行ってくれたことがとてもうれしくて、ずっと記憶に残っています。

 それから、年が近くて、いつも一緒に遊んでいた弟は、よき理解者だと思っています。IQや才能は関係なく、ただ兄弟として仲がいい。縁があればの話ですが、将来の結婚相手にも、IQが高いことや話が合うことは求めません。ギフテッドだからといって特別扱いしないで、ただ人間として大切にし合えればいい。

 IQは高いかもしれませんが、人と比べても意味がない。そういうふうに生まれただけで、ぼくはぼくですから」

 ギフテッドは、人口の2%程度とされる。50人に1人がギフテッドなら、そう珍しい存在ではない。太田さんや竹中さんのように、挫折から這い上がった天才もいれば、いまも苦しんでいる天才もいる。彼らをうらやましいと思うべきか、気の毒だと思うべきか──それを考える時点で、凡人なのだろう。

※女性セブン2022年2月3日号

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