かつてテレビは家族で視聴されていた。1969年7月、月面に着陸した米宇宙飛行士の様子をテレビで見る日本人の一家(時事通信フォト)

かつてテレビは家族で視聴されていた。1969年7月、月面に着陸した米宇宙飛行士の様子をテレビで見る日本人の一家(時事通信フォト)

 そんな待遇でもかつては次から次へと志望者がやってきたのは、しばらく我慢をすれば成り上がれる可能性があったからだ。苦楽をともにして親しくなった若手芸人が売れっ子になり、それとともにかつてのADも番組作りなどの権限を持てる地位になり、仲間と制作会社を立ち上げて活躍する人もいた。今でもそんな未来への希望を抱いていないわけではないだろうが、仕事を始めてしばらくすると、過去の成功パターンを追えるような状況にないと思わせられるらしい。

 特に丸井さんが以前と違うと感じているのは、若いAD達が「将来が見えないのでやめる」といって、職場ではなくテレビ業界自体を去っていくパターンが増えたということだ。

「若手が減り、中堅以上が増えると、番組構成に若手の意見がなかなか反映されにくいです。局によっては、前途有望な若者を育てようという取り組みもしていますが、はっきり言って焼け石に水状態。テレビ局で働く若いAD自身が『テレビは中高年向けでつまらない』とか、そもそも『テレビは見ないので部屋にない』というADさえいますから」(丸井さん)

 丸井さんは他にも、ADになりたい若者も少なければ、現役のADがディレクターになりづらい、という実情についても指摘をする。中堅以上のディレクターが多すぎて、新人ディレクターの席が開かないという、どの会社にも存在する「高齢化問題」だ。中堅のディレクターの上世代も現役で昇進しづらく、かつ決して台所事情のよくない業界となれば、どのポジションにいても、若手だというだけでデメリットを感じるしかない。だから、業界で働く若者ほど「将来がない」と強く感じるのだという。

 前出の佐々木氏は、この「呼称変更」を大々的に発表してくるあたりが、テレビ局が若い人々から「無視をされ始めている」証左だと断言する。

「現場からは人が減らされ、社員は非正規社員に置き換わり、制作費もギャラも減らされているのに、DX(デジタルトランスフォーメーション)だSDGsだとあれこれ要求され仕事は増える一方。ADまでいなくなって、現場はさらに困窮して、だから番組のコンテンツとしてのクオリティも下がる。若い優秀なADがやってきても、こうした現場に幻滅し『これならYouTubeで個人で発信した方がいい』といってやめていく。若手にも時間とチャンスとお金を与えない限り、このまま無視され続けるのではという危機感はあります」(佐々木さん)

 たかだかAD、だがされどAD。かつて景気が良かった頃、そして今ほど世の中に「コンテンツ」が溢れていなかったからこそ成立したもの、それがテレビ局のビジネスモデルだった。それらが、音を立てて崩壊する中でのADの呼称変更で「どうにかなる」とテレビ局首脳が考えるのだとしたら……。

 現場ADの本音はなにより、給与など「待遇を改善せよ」ということに他ならないはずだが、賃金アップや休暇増よりも先に、テレビ局経営陣が提示したのは「呼称変更」。若い局員やスタッフの減少、AD不足はダイレクトにテレビ局の存亡に関わってくる問題だとしても、両者の思考の差が埋まる頃には、テレビのようなメディアが存在し続けているのだろうか。

関連記事

トピックス

森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン