批判は収まらず、ABCは彼女を2週間、番組から外すと発表したが、同番組がその時間帯の視聴率トップに君臨してきたのは彼女の人気のおかげ。「世界の森羅万象を歯切れよく解説するゴールドバーグは、特に20代から40代の主婦たちから絶大な支持を得ている」(主要メディアのテレビ担当記者)というから、ABCにとっても「泣いて馬謖を斬る」決断だったわけだ。
これだけの発言をし、反省も不十分ならば仕方ないのかもしれないが、人種問題やユダヤ問題に敏感なアメリカの白人はどう見ているのか。民主党支持の元大手企業幹部の白人男性(78)はこう語った。
「ゴールドバーグはエンターテイナーであって、学者でも政治家でも宗教家でもない。黒人として生まれ、人種差別を受け続けてきた彼女にとって人種主義がどういうものか、差別を受けたことのない白人がどうのこうの言っても始まらない。ユダヤ系アメリカ人が黒人と同様の差別を受けているとは思えない。外見は白人なのだから黒人とは違う。
もちろんユダヤ系団体の批判は理解できるが、普通の市民からすれば、彼女の気持ちも理解できる。ナチスは悪だが、最近のアメリカで台頭している白人至上主義者、人種差別主義者も悪だ。どっちのほうが悪いか比較することには大きな意味はない」
ひとつ言えるのは、黒人女優が人種問題やホロコーストについてテレビで堂々と持論を述べること自体、米エンタメ界で「ブラック・パワー」が力をつけてきた証拠だということ。いまや彼らなしでは映画もドラマも作れないし、ビッグヒットは望めない。
■高濱賛(在米ジャーナリスト)