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富士山噴火、都市への降灰問題 交通、物流、ライフライン…どう影響するのか

富士山噴火の被害はどこまで及ぶ?(時事通信フォト)

富士山噴火のリスクを知ってそのときに備えよう(時事通信フォト)

 富士山噴火の現象別に被害範囲や時間予想を読み解く『富士山ハザードマップ』が2021年、17年ぶりに改定された。富士山噴火は本当に起こるのか? そして噴火後に首都圏を襲う最悪の事態を知り、そのときに備えよう。

 あの秀麗な富士山が火を噴く可能性はあるのか? 武蔵野学院大学特任教授で火山学者の島村英紀さんは言う。

「富士山はフィリピン海プレートが陸地に入り込んだ位置にあり、そのプレートは年に約4.5cmずつ南東から北西に動いています。そのひずみが跳ね上がる南海トラフ巨大地震はいつ起こってもおかしくなく、その地震が富士山のマグマだまりに影響し、噴火する恐れがあります」

 地球科学者で京都大学名誉教授・特任教授の鎌田浩毅さんはその周期と規模についてこう解説する。

「そもそも富士山は50〜100年ごとに噴火してきた活火山です。1707年の富士山の宝永噴火は南海トラフで起こったマグニチュード(以下、M)9クラスの宝永地震の49日後に発生しました。富士山は誕生してから10万年とされ、人間なら約10才。東日本大震災で20の活火山が噴火スタンバイ状態になり、富士山もその1つ。前回は200年ぶりの噴火でしたが、今度は300年ためて5割増しの大噴火になる可能性があります」

 富士山噴火と密接に関連する南海トラフ巨大地震は日本人がこの列島に住み着いてから13回、周期的に繰り返している。

「日向灘の地震がM6.8なら南海トラフ地震の臨時情報が出たはずですが、M6.6だったので評価検討会が開催されませんでした。M6.8も6.6も誤差の範囲で、本来開催すべきだったと考えます」(島村さん・以下同)

 したがって、Xデーに備えて、一刻も早く警戒&準備する必要があるが、その危機感が広く共有されているとはいえないのが現状だ。

「富士山ほど科学監視されている火山はありませんが、どのデータがどう変わると噴火するかは未解明です。もし宝永噴火並みの火山灰が降れば、都心に約2時間で降灰し、都市機能をまひさせ、大混乱を招くでしょう」

 その影響は下記のように交通や通信、電気、上下水道、建物まで実に多方面にわたる。網の目のように張り巡らされた流通が遮断され、被害は日本全国に及ぶ。首都圏に暮らす人々にも多大な影響を及ぼす。実際にどんな影響があるのか、分野ごとに紹介する(中央防災会議 防災対策実行会議「大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ」の資料を参考に、編集部で作成)。

■鉄道
 地上路線は微量の降灰で信号や踏切の動作不良、電車位置が確認できないなど安全面の不具合が起こって運行見合わせに。地下鉄も需要増加による車両・作業員不足で輸送力が低下する。

■道路
 火山灰による視界不良や、道路上に積もった灰でタイヤがスリップするなど、安全な通行が困難に。また、鉄道・航空交通の停止に伴う交通量増などにより速度低下や渋滞が発生する。

■物資
 微量の降灰でも、人口の多い地域では買い占めにより、食料や水などの売り切れが発生。また道路や鉄道など交通に支障が生じると、物資が届かず、店舗の営業が困難に。

■人の移動
 鉄道が動かなくなると、駅に滞留者があふれる。さらに、通行止めや渋滞など道路交通に支障が生じると、移動手段が徒歩だけになってしまう。火山灰で足元が悪く事故に遭う可能性も。

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