「筋肉は裏切らない」──筋肉指導の谷本道哉・近畿大学准教授(中央)は不動のキャスト(写真提供:NHK)
——ほかに肩書をめぐって議論になった方はいますか?
平元D:樽美酒研二さんですね。ゴールデンボンバーのメンバーということは、もう皆さんが知っている情報じゃないですか。何かおもしろい肩書をつけられないかと事務所の方にもご相談して、「エアードラマー」ということになりました。
石本P:その人の個性が一言で伝わる肩書というのを重視していますよね。
平元D:筋トレ指導を担当する谷本道哉さん以外の出演者の方々は、番組でほとんど喋りません。衣装も全員統一しているので、出演者のパーソナリティを伝えられるのは、紹介テロップだけなんです。その短いテロップの中で、視聴者の心を掴むことを目指しています。
——SNSでの話題性という点で、狙いが上手くハマった例は何でしょうか?
平元D:ヨガのインストラクターをしているタルン(Tarun)さんです。普通だったら「ヨガ講師」のような肩書になるところですが、タルンさんはご自身でヨガの流派を作り、その流派の“マスター”としてヨガを教えていると聞き、「じゃあヨガマスターだ!」と決まりました(笑)。狙いが当たり、ヨガマスターという肩書はSNSで大きく話題になってくれました。
目立つことをしないと、番組を観てもらえない
——なぜ、そこまで話題性というのを重視しているのでしょうか? NHKの番組が貪欲に話題づくりをしていることが少し意外に感じられますが……。
石本P:たしかに、なんで俺たちはこんなに頑張っているんだろう?(笑) でも深夜の5分番組なので、普通にしていたら誰も観てくれないんですよね。せっかく作ったからには、大勢の人に観てもらいたい。
だから、放送前にSNSで話題になることで、本編を視聴してもらうという流れを組み立てています。「目立つことをしないと、番組を観てもらえない」という、いい意味での危機感を全体で共有できている気がします。
平元D:事前の広報戦略には相当力を入れていますよね。貪欲に話題づくりをする一方で、番組の内容自体はとてもシンプルです。放送開始すぐに筋トレの解説が始まり、ではやってみましょう、よく頑張りました、ハイさようなら、という以上でも以下でもありません。
「奇をてらった演出は入れず、筋トレを行うための濃密な5分間にしよう」というのは制作陣として、この3年間変わらず大切にしてきたコンセプトです。そして、その濃密な5分にたどり着いてもらうためには、キャッチーな話題づくりが必要なんです。
番組出演を機に、筋肉タレントとして飛躍するケースが多い(写真提供:NHK)