ライフ

やむを得ぬ卒業式のライブ配信 わが子を「映すな」と要求する親もいる

2020年5月、友人や家族らの参加がない客席が空席で行われた米・イリノイ州の高校卒業式。式の様子は映像で配信された(AFP=時事)

2020年5月、友人や家族らの参加がない客席が空席で行われた米・イリノイ州の高校卒業式。式の様子は映像で配信された(AFP=時事)

 修学旅行が中止になるなど、一生に一度しかないことがいくつも失われた今の子供たちだが、それでも思い出を残してやりたいと大人たちは色々な工夫を重ねている。間もなくやってくる「卒業式」のライブ配信をめぐり、親達の奮闘と配慮に子供たちが振り回されている実態について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 新型コロナウイルスの第6波によって、若干でも戻りかけていた日常生活は、また遠いものになってしまった。仕事に行けない、遊びに行けないという苦痛ならまだ我慢できるが、入学式や卒業式など、我が子にとって「一生に一度」の機会を奪われるのだけはどうしても我慢できないというのも、多くの親の本音だろう。

 千葉県在住の会社員・柳田幸子さん(仮名・40代)は、そんな親の悲しみを少しでも和らげるため、目前にひかえた小学生の息子の卒業式のため、ママ友たちにある提案をしたのだった。

「コロナの影響で、各家庭から卒業式には親が1人だけしか参加できない、そんな通達が学校から来ました。ママが参加すればパパは参加できない。現状を見れば理解するしかないと思いますが、子供も親もあまりにも不憫。だから、スマホとビデオチャットアプリを使い、卒業式を中継しよう、そう提案したんです」(柳田さん)

 もちろん、学校側も卒業式を撮影して、その映像を後日保護者に配るなどの配慮を行っているというが、今まさに卒業せんとする我が子の姿をリアルタイムで見たい、そんな親心に応えたいという一心だった柳田さん。ママ友たちからは「名案だ」「ありがとう」と絶賛され、新たにビデオカメラも購入。夫と配信のテストをするなどして卒業式に備えようとしていたその矢先、あるママ友から届いたのは、意外なメッセージだった。

「中継をしてほしくない、とメールが来て、なんで? と思いました。事情を聞くと、うちの子のプライバシーに関わるから、と言われてしまいました。正直、画質もそれほど良くないし、親や知り合いでないと、誰がどの子なんてわからないんです。それでもダメだと。その子の時だけ配信をやめたり、カメラを向けるのを止めるのも気の毒だし不自然。結局、配信はやめました」(柳田さん)

 子供だろうがプライバシーは確かに存在する。だが、敏感になりすぎでは、と柳田さんは感じたが「何かあった時、責任取ってもらえます?」というママ友の質問に返す言葉は見当たらなかった。

 柳田さんが提案したような「アイデア」だが、実はこのコロナ禍で、少なくない親たちが様々な場面で実践していた。関西在住の公務員・江口陽一さん(仮名・30代)も、コロナの影響から息子のサッカーの試合を観戦できる親の数が限られ、試合の様子をビデオチャットアプリで「生配信」した。ほとんどの親からは「感謝」のメッセージが届いたが、強いクレームが一人の親から入ったと打ち明ける。

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン