『柄本家のゴドー』の初日舞台挨拶に登場した柄本時生

『柄本家のゴドー』の初日舞台挨拶に登場した柄本時生

柄本家をルーツに持つ強み

 とはいえ、2人とも、いま演じているような役ばかりを演じてきたわけではない。映画『真夜中乙女戦争』での佑は主人公に多大な影響を及ぼす過激でニヒルな男を演じている。また、菅田将暉(29才)主演のドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)にゲスト出演した際には“記憶喪失の爆弾魔”として登場し、物語をかき回すポジションを担った。時生もNetflixオリジナルドラマ『全裸監督』シリーズで主人公らと帯同する素朴な青年に扮し、映画『BLUE/ブルー』では、ボクシングに目覚め努力する意義を見出す青年を好演していたことも記憶に新しい。特に後者に関しては、主人公の1人ともいえる役どころだった。

 両者とも10代のうちに映画主演を経験し、早くから頭角を表してきたために膨大な数の出演作があり、多種多様な作品・役でキャリアを重ねてきた。どのポジションにもキャラクターにも適応してみせるのが、この兄弟の強みなのだ。

 柄本兄弟の強みのルーツには、やはり父・柄本明(73才)と母・角替和枝さん(享年64)の存在があるのだろう。俳優一家に生まれ育ち、幼い頃から演技に慣れ親しんできたわけだ。2019年に公開された映画『柄本家のゴドー』は、「ET×2」という演劇ユニットを組んでいる佑と時生が、父・明を演出家として迎えて挑む舞台『ゴドーを待ちながら』の稽古場に密着したドキュメンタリーだった。

 柄本明といえば、現在の日本の演劇界や映画界において重鎮と言える存在だ。同作には、“親子だから”という甘えは通用しない現場の様子が記録されていた一方で、親子で純粋に演技を楽しむ様子も収められていた。こうした環境で育った事実は、当然ながらそれぞれの現在の芸にも反映されるはず。父の明がそうであるように、求められるものに的確に応えられてこその“名優”である。この環境が、他の2世俳優や兄弟で活躍する俳優たちとはまた違う、柄本兄弟ならではの強みに繋がっているのではないだろうか。

【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン