『正体』でもうひとり重要なのは、主人公を「追う側」。「追われる側」が目立たぬように声も形も小さくなっているに対して、「追う側」は強面で声がでかい。外見を変えない。へこたれない。いつもイライラしている。あまりに執着が強くて、コミカルに描かれることもある。逃亡劇では、追う側のエネルギーが、ドラマの推進力、エンジンにもなる。そのキャラクターが面白いかどうかはカギになるのだ。
典型はかの銭形警部である。これまでのドラマで個人的に印象に残っているのは、このドラマにも出ている上川隆也が主演した時代劇『逃亡』(2002年)の宅麻伸。松本清張原作だけにスリリングな展開が続いたが、暴力的に上川を追い詰める宅麻は、ものすごく感じの悪いやつだった。二枚目路線をかなぐり捨て、本人がイキイキと演じているようにも見えたのも事実。やりすぎくらいがちょうどいい。俳優としては面白い役なのかもしれない。
『正体』で鏑木を執拗に追跡する刑事・又貫はいつも顔が怒っている。いつも突進あるのみ。演じるのは、音尾琢真。ナイスな配役だ。二話では、鏑木を自宅に住まわせているウェブ編集プロダクションのライター・ディレクターの沙耶香(貫地谷しほり)のところに又貫が現れる。鏑木、危機一髪! こりゃ、大変だ。
鏑木の逃亡&お助けの技VS又貫の追っかけ力。決着が気になる。