プーチン氏のプライベートはトップシークレット(写真=SPUTNIK/時事)

クリミア併合記念コンサートではいたる所に「Z」の文字が見られた。写真はコンサートでのプーチン氏(写真=SPUTNIK/時事)

 女教師は「愛国心や忠誠心に国旗はいらない」と教えるが、子供たちの「こっきはぼくたちのものだ」という声に、「とてもだいじなものだとしたら、みんなですこしずつ、もっていたらどうかしら」と提案する。子供たちは1人ひとり国旗を切り取り、自分で持つことで得意な気分になる。旗のなくなった旗竿は、子供たちが窓から放り投げた。不安や不審を感じていたはずの子供たちは、あっという間に女教師を好きになってしまう。女教師はすべて決められた通りの方法を使い、子供たちの感情、考えを23分間で変えてしまうのだ。

 コントロールされた状況下では、子供の心は操作しやすい。いや、どんな人間の心も自由になってしまうだろうと、クラベルは書いている。子供たちに良いことをした、誉められることをしたという気分にさせ、国旗を小さく切って持たせることで、国の象徴をいとも簡単に破壊させる手法は怖い。恐怖や怖れ、罪悪感、羞恥心などを感じさせない説得の方法を用い、統制しやすい環境の下で集団心理を利用すれば、人は操作されやすいことが分かる。

 ロシアではZの文字がウクライナ侵攻のシンボルとなり、急速に広まっている。Zは「ロシアのために」という意味の「Za Poccnr」(キリル語では別表記)のZだろうという説もあり、ロシアにとって縁起が良い文字らしい。この文言は、モスクワで18日に行われたクリミア併合記念コンサートにも大きく掲げられていた。英BBCニュースはZの文字について、シンプルで認識しやすく力強いシンボルだと説明し、ロシア語のキリル文字には無いが、ロシア人の大半はアルファベットのZで認識しているという。

 Zの人文字を作ったり、ZのTシャツを着せて踊ったり、子供たちは楽しそうだ。ウクライナに侵攻するZのマークが付いた戦車に手を振る人たちも、誇らしげな表情をしている。だが、多くのメディアはその様子について、「ロシアはウクライナ侵攻を正当化するため、Zを用いて子供たちを利用している」と報じている。ロシア側に立てば違う主張があるだろうが、何も疑うことなくロシアや大人の言うことを信じる子供たちの内には、隣国への偏見や憎悪が生まれないのだろうか。

 ウクライナから強制的にロシアに移住させられている住民もいると聞く。もしかすると、政治や社会情勢などが分からず、恐怖や不安に晒されていた子供たちに『23分間の奇跡』のようなことが起こるかもしれない。

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