国際情報

ロシアで広がる戦争支持の「Z」 “偏見と憎悪”を生む恐怖の手法

ウクライナ東部のドネツクで戦車を使ってパトロールするロシア軍(時事通信フォト)

ロシア軍の戦車に記された「Z」の文字(写真/時事通信フォト)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、ロシア国内で広がる「Z」の文字について。

 * * *
『23分間の奇跡』(集英社)という本をご存知だろうか。著者は英国の小説家ジェームズ・クラベル。第二次世界大戦で従軍し、18才の時に日本軍の捕虜となり、シンガポール収容所で終戦を迎え、米国に渡ったという人物だ。この本は彼が書いた唯一の短編。翻訳したのは元東京都知事の青島幸男で、日本での出版は1983年である。

“Z”の文字が記された小さなワッペンが、ロシアの学校で子供たちの机に配られていく映像を見て、この本のことを思い出した。

 原題は「The Children’s Story…But Not Just for Children」。青島氏はこの本について、訳者あとがきで「児童書の形態はとっているが、それは1つの擬態であり、実は大人たちのための問題提起の書でもある」と書いている。「奇跡」という言葉が付けられた日本語のタイトルは、明るい素敵な事が23分間の間に起こりそうな印象を与えるが、内容は真逆だ。

「戦争に敗れ、占領されたどこかの国のある学校の教室に、新任の若い女教師がやってくる。彼女は教室にいる子供たちに授業を施す。物語は午前9時に始まり、23分後に終わる。初めは疑問と不審を抱いていた生徒たちが、わずか23分間で、暴力も脅迫もなく洗脳され、考えが大きく変わってしまう過程が描かれている」(ウィキペディアより)というのが作品の要約だ。

「先生はこわくてふるえていた」から始まるいくつかのエピソードは、どれも衝撃的だ。例えば、毎朝必ず行われていた「国旗への忠誠の誓い」では、女教師が子供たちへ「誓うとは、忠誠とは何か」と問いかける。子供たちは誓いを暗記しているだけで、誰もその意味を理解していない。すると女教師は、その意味を子供たちに分かるように教え、教えなかった前の先生を良くない先生だと言う。

関連記事

トピックス

米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
埼玉では歩かずに立ち止まることを義務づける条例まで施行されたエスカレーター…トラブルが起きやすい事情とは(時事通信フォト)
万博で再燃の「エスカレーター片側空け」問題から何を学ぶか
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
事業仕分けで蓮舫行政刷新担当大臣(当時)と親しげに会話する玉木氏(2010年10月撮影:小川裕夫)
《キョロ充からリア充へ?》玉木雄一郎代表、国民民主党躍進の背景に「なぜか目立つところにいる天性の才能」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
米利休氏とじいちゃん(米利休氏が立ち上げたブランド「利休宝園」サイトより)
「続ければ続けるほど赤字」とわかっていても“1998年生まれ東大卒”が“じいちゃんの赤字米農家”を継いだワケ《深刻な後継者不足問題》
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン