深セン市内の日系プリンターメーカー工場。2000年(時事通信フォト)

深セン市内の日系プリンターメーカー工場。2000年(時事通信フォト)

「メーカーを追い出されたり、独立して小さな工場を経営したりの技術者が中韓の仕事を請けてましたね。隙間家電(ジェネリック家電とも)が多かった。テレビデオとか1ドア冷蔵庫とか。それがいまやサムスンもLGも世界企業ですからね」

 そんな1970年代から1990年代に現役技術者としてものづくりをしてきた彼にとって韓国はもちろん、とくに中国の躍進は感慨深いと話す。

「あんなに繁栄するなんてね。私が中国に初めて仕事で行ったときなんて本当に貧しくて、みんなボロボロの自転車を漕いでましたよ。人民服はもちろん下着でウロウロしているお爺さんとか普通で、電機やガスすら通ってないような集落とかありました。着の身着のまま、畑で取れたものを食べるだけの家族とかね。それがコロナ前に旅行したら未来都市みたいになってるんですから、たった30年であんな風になるとは想像しませんでした」

 深センなどまさにそれだろう。世界的なメガシティをいくつも抱えるまでになった中国、いまや日本の新幹線が中国の新幹線として走り、日本の造船は中国のコンテナ船となって世界を駆け巡る。それらは輸出もされている。家電にいたってはハイアール(海爾集団)が三洋電機を吸収して「アクア」ブランドとして世界最大の白物家電メーカーとなり(旧三洋電機の海外工場の一部はTCL集団が買収)、東芝の白物家電はマイディア(美的集団)、映像部門はハイセンス(海信集団)に、NECと富士通のパソコン部門はレノボ(聯想集団)、パイオニアはBPEA(中国の投資ファンド)にそれぞれ吸収、あるいは傘下となった。教えていたはずが、立場が逆転してしまった。

「ハイアールなんて1980年代はいつ潰れてもおかしくない会社だった。共産主義しか知らない人たちでしたから、会社経営とか資本主義をよく知らないわけで、全部日本が教えたようなものです。それがいまや世界企業、中国も超大国ですからね」

 たった30年で逆転した。国際的な信用はともかく政治力、経済力、国際競争力のすべてにおいて最強、世界経済は米中二大国によるパワーゲームとなった。

「メイド・イン・ジャパンを放棄してはいけなかったんです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン