(写真/時事通信社)

「論破王」と呼ばれる「ひろゆき」こと西村博之(写真/時事通信社)

「いまの日本では、論理立てて物事を述べる能力を“論破”と表現し、非常に肯定的に捉えていると感じます。確かに、論理的に話を組み立て、相手を説得していく力は必要です。しかし、論破と説得は似て非なるもの。相手の同意を求める説得と違い、論破は文字通り相手を“破る”行為です。言葉で相手を打ち負かし、自分の正当性を周囲に見せつける“言葉のプロレス”です。

 日本人は、同調圧力などで日頃から言いたいことを言えずにがまんしている人が多い。言いたいことをはっきりと言う、ひろゆきさんのような人たちを『カッコいい』と思うのでしょう」

 コミュニケーション研究家で心理学者の藤田尚弓さんは、論破好きな人たちに浮かび上がる不安を指摘する。

「本来、日本人は“和を以て貴しと為す”国民性で、自分の意見を述べることはあまり望ましいとされなかった。

 一方、欧米人は議論が好きで、アメリカでは自分の意見をプレゼンする『ショー・アンド・テル』の授業を子供の頃から学校で行います。こうした欧米の影響もあり、近年は日本でも、国際的に活躍するには自分の意見をはっきり言うことが大事という風潮に変わってきました。

 しかし、本当に国際社会で活躍している人たちは多様性を受け入れる協調性も持ち、『相手を言い負かそう』とは考えていません。いつの時代も、どこの国でも論破したがる人たちはいるもので、相手より優位に立ちたい思いや自己愛が強く、攻撃性がある。これは教育の影響というより、個人の性格の特性に問題があると感じます」(藤田さん)

 さらに、年功序列の意識が強い日本では不平等な議論が起こりやすく、会社の会議でも、まるで「論破」のショータイムのようになってしまう。

「ディスカッションする能力が高いアメリカ人の場合、会社でも対等な立場として討論して、その会議が終わったら『有意義な時間だった』とさっぱりしています。ですが、日本の場合は上司など力のある人が一方的に言いたいことを言うだけの場面が目立つ。言い返す人がいたとしても、けんかのようになって禍根が残りやすい。だから、何か言いたいことがあっても口をつぐむべきだと、ますます不平等になってしまいます。

 コミュニケーションを科学的に分析したとき、自分の意見を一方的に主張しても相手の心を変えることは不可能といわれます。会社や家庭で論破が役立つ可能性は低く、むしろトラブルの引き金になります」(岡本さん)

※女性セブン2022年5月5日号

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