定期健康診断は受けていたのか

改めて認識した自身の死生観(撮影/小倉雄一郎)

改めて認識した自身の死生観について語る佐野さん(撮影/小倉雄一郎)

 実は、多発性骨髄腫は治療が必要な症状が出るまで、ある程度の時間がかかる病気。つまり、異常な状態は発症以前からしばらくの期間、続いていたことになる。定期健診などは受けていたのだろうか。

「定期的な検査は受けていませんでした。若い頃に虫垂炎から腹膜炎を起こすなど、手術歴もありましたが、おおむね健康でしたので過信していたのかもしれません。医療モノの作品で知己を得たお医者さんに何かあれば相談していましたし、気になることがあれば数年に1度、人間ドックを受けてはいました。ウチは代々がん家系で、父がすい臓がんで75歳で亡くなっていますし、いつかそういう時が来るのではないかと思ってはいたのですが……」

 多発性骨髄腫は高齢の男性に多く、診断時の年齢の中央値は66歳。佐野さんもまさに66歳で発症した。原因不明の病であり、そもそもがんは2人に1人がかかる時代ではあるが、佐野さんはなぜ罹患したのか、佐野さん自身、自問自答せずにはいられない。

「尊敬する原田芳雄さん(享年71)や蟹江敬三さん(享年69)ら先輩俳優が70歳前後でがんに倒れているので、僕も60歳過ぎ頃から可能性を考えなくはありませんでした。若い頃は深酒することもありましたし、タバコも吸っていたこともありますが、それも週に一箱くらい。その後は一年に何度かパイプやシガーを嗜むくらいでした。お酒は食事にあわせて飲みますけれど。我が家はカミさんの好みもあり、食生活は野菜と魚の和食中心です。それでも、加齢には抗えないということでしょうか。

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