暴力団とは無関係な建物を襲撃してしまうことも(写真はイメージ)
ある暴力団組織幹部・A氏は、抗争などで相手の事務所や関連施設を襲撃したり、拳銃を撃ち込んだりする場合、「決行するにあたって、そこに人がいないことが前提になる」と話す。
凶器をもって事務所に乗り込むだけでも、実行犯にとっては命がけで、「自分に振りかかるリスクはなるべく避けたいのが本音」(A氏・以下同)。襲撃に行く組員は相手をやることより、できるだけ早くその場から逃げることを考える」というのだ。
リスクを避けたいはずのヤクザだが、狙ったビルが暴力団組織とは何の関係もない建物だった、襲撃する事務所を間違えたという事件が、結構な頻度で起きている。それはなぜなのか、A氏にその理由を尋ねると、「撃ち込みなどを実行する者と事前に場所などを下調べする者は別だからだ」と答えた。
「周りに同じような建物があっても、今はどこの組も何台もの監視カメラを付けているので、実行者はその建物かどうかゆっくり確認することができない。建物の前を何度も行ったり来たりすれば、その時点で危なくなる」
通り沿いに似たような建物があっても1つ1つ確認することはできない。これだと当たりを付けて狙うため、間違いが起きるというのだ。ヤクザなりのリスク回避に巻き込まれた結果ということだろうが、被害者にとってはひどい話だ。
「人がいても、行ってしまえばやるしかない。バイクだと現場に行きやすく逃げやすいが、コケて横転する危険もあるから逃走時は要注意だ。誰もいなくても、イザ!という時に拳銃が不発で弾が出ず、大慌てで逃げ帰るようなことも起こる」
暴力団事務所等への襲撃では、今回のように車が突っ込むことも多いが、ドアやシャッターに拳銃が撃ち込まれることもある。そのような時、実行犯は前もって襲撃から逃走するまでを何度もシミュレーションをすることになる。シミュレーション通りに実行し逃走するには、襲撃現場に人がいない方が安全で確実になのだ。
「あるヤクザ映画で、最後に投げようとした手榴弾が湿気で爆発せず、組長が撃たれて死ぬというのがあった。誰もあんなことにはなりたくないんでね」とA氏は話す。
敵対する事務所に勢いに任せてむやみに突撃するのは、今や映画やドラマの世界でのことらしい。ヤクザの襲撃も、彼らにとってできるだけリスクが低い方法が考えられているということらしい。