マスク着用義務化に反対するフランスの人々。その後、マスク着用は義務化されたが、感染状況にあわせて屋外、公共交通機関、屋内など段階にわけて義務が解除されている(AFP=時事)
「マスクしてれば言われませんから」
そうつぶやく警備員は70代とのこと、「椅子に座っていいし、車の持ち込みもできるからいい現場ですよ」とも言っていた。筆者は2年前、『炎天下にマスク姿で道路に立つ70代の2号警備員が抱える不安』において現場の声とともに「通行人と揉めるくらいならと熱中症の危険があってもマスクをしているのが現実」と書いたが、いまや通行人がいなくても山の中でもマスクになってしまった。もはやマスクが目的、とでもいうべきか。後日、別の元警備員の話。
「公園で『マスクをお願いします』と注意してましたが、自分でも変な話だと思います。会社は『クライアントの希望だから』という話でしたが、真夏にする必要ないですよ。公園は広いし、ごった返すような混雑なんかありえません。誰もいないスペースで一人写真撮ってる人に『マスクのご協力をお願いします』なんて私も言いたくありませんし、国もしなくていいって言ってるはずなのに」
それでも仕事だったのでお願いを続けたと話す。その公園、筆者も行ってみたが確かに「利用にあたっては、マスクを着けましょう」だった。これまでの政府通達とは真逆の判断だが、たとえば横浜市の『新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた公園利用について』を見ると「よくあるご意見・ご質問と回答」として「公園を使わせて良いのか。閉鎖しないのか」「遊具の使用を禁止しないのか」「公園の遊具に消毒はしないのか」「身近な公園の遊具の利用を休止してほしい」といった市民の要望と、それに対する回答が記載されている。自治体も大変だ。どれだけの数の声が寄せられたかは書いていないが、こうした声もまた「炎天下の公園でもマスクのお願い」という政府通達と真逆の対応をせざるを得なくなっているのかもしれない。
空気読まないと面倒だから
先の児童遊園に向かい、ベンチに座るお父さんに話を聞く。彼もその子供もマスクをしていなかった。政府通達において何ら問題はない。そもそも公園には2組の親子と自転車を押す高齢男性の7人(筆者含む)しかいない。これは筆者の感想ではなく、あくまで政府の方針に照らしての「問題はない」である。
「通勤とか店入るときはマスクしますけど、しなくていいと思ってますよ。でも空気読まないと面倒ですからね」