国内

首都直下地震の被害 堤防損傷なら250万人が床上浸水、水が引くまで2週間の想定も

阪神・淡路大震災で、黒煙を上げて燃え上がる神戸市内(1995年撮影、時事通信フォト)

阪神・淡路大震災で、黒煙を上げて燃え上がる神戸市内(1995年撮影、時事通信フォト)

 東京都は5月25日、首都直下地震の被害想定の新たな報告書を発表した。実に10年ぶりのことだ。最も巨大な「都心南部直下地震(M7.3)」が発生した場合、震度6強以上の揺れに見舞われる範囲は東京23区の約6割に広がり、建物被害は約19万棟、死者は約6000人に及ぶと試算された。

 東京で発達する地下空間の被害はどうか。昼食時の地下街を大きな揺れが襲う。悲鳴が響く中、停電が起きると、非常口を示す緑のランプに人々が殺到し始めた。スマホの明かりを頼りに別の出口を探そうと歩き始めたその足元に、一気に濁流が襲いかかる──。京都大学名誉教授で地球科学者の鎌田浩毅さんが話す。

「首都直下地震の揺れが原因で東京の巨大な下水道網に亀裂が入れば、地下街や地下鉄の駅構内に大量の水が流入します。そうなれば自力で脱出することは難しい。レスキュー隊も進入を阻まれ、多くの人が溺れて命を落とす可能性があります。地下鉄や地下街の多い東京は、特にこうした水害を恐れるべきです。経年劣化した下水道管も少なくありません」

 さらに、こんな予測もある。立命館大学環太平洋文明研究センター特任教授の高橋学さんが指摘する。

「都心の地下は駐車場となっているところが多い。自動車にはガソリンとバッテリーが積まれていて、ショートなどにより、地下の閉ざされた空間で火災が起きる危険があります。また、地下鉄には高圧電流が流れており、浸水で感電死することも考えられます」

 地下で火災が発生すれば逃げ場はない。パニックに陥った人々が地上へとつながる階段に殺到、群集雪崩で圧迫死という最悪のシナリオも予見される。

 下水管の破損以外にも「水の危険」は深刻だ。首都直下地震では東日本大震災時のような巨大津波は想定されていないが、水害が発生しないわけではない。神戸大学都市安全研究センター教授の吉岡祥一さんが解説する。

「大きな河川の下流に近い地域は、長年堆積した土砂のため地盤が弱いことが多い。また、東京では荒川や隅田川などの川沿いの土地は軟弱地盤である可能性があります」

 地震の揺れによって堤防が損傷することが予想され、そうなればわずかな高さであっても津波や高潮を防げない。水は濁流となって市街地へと流れ込むことになる。東京下町の海抜0m地帯は、すぐに水没してしまう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト