ビジネス

新たな経済単位「メガリージョン」 多様な人材を引きつけられるかが鍵になる

「メガリージョン」の一角を担う米シアトル(Getty Images)

繁栄する「メガリージョン」の一角、米シアトル(Getty Images)

 一般に「国」という場合、多くの人が思い描くのは「国民国家=ネーション・ステート」だろう。明確な国境があって、その領土の中に国民が居住し、その国民が主権者となって国の諸制度を決めていく─—それらはすべて「国境が閉じている」という前提で成り立っている。それゆえに「国民意識=ナショナリズム」が重視され、国という枠組みの中で経済の成長も考えられてきたのだが、21世紀世界を牽引する経済成長を見せているのは、そうした国民国家に代わる「メガリージョン」だと経営コンサルタントの大前研一氏は解説する。

 * * *
 21世紀の国家というものを考える際に興味深い実例の一つがイギリスです。現在、同国を率いるボリス・ジョンソン首相は、歴史的に最も愚かなイギリス首相として名を残すことになるだろうと私は考えています。この人はもともとロンドン市長をやっている時からブレグジット(イギリスのEU離脱)推進派でしたが、いまだにその判断がいかに間違っているかを全く理解していません。

 イギリスが抱えている最大の問題は、北アイルランド問題です(図表1参照)。1998年に和平プロセスに合意する前は、英国国教徒のほうが多かった北アイルランドと、カトリック教徒の多いアイルランド共和国との間でテロや武装闘争が頻発(北アイルランド紛争)していましたが、イギリスとアイルランドが同じEUになる流れの中で、和平協定が結ばれました。その後、北アイルランド地域ではカトリック教徒が増えているほか、EUを離脱したイギリスから分離して、EU残留=アイルランド共和国との統一を求める勢力が優勢となっています。

【図表1】

【図表1】ブレグジットでUK=連合王国が崩壊?

 かてて加えて、2021年5月にスコットランドの議会選挙が行なわれ、ニコラ・スタージョン首相率いるいわゆる独立派が勝利しました。前回の住民投票では、イギリスからの独立を拒否する勢力が勝利したのですが、それは、当時まだEUメンバーだったイギリスがスコットランドのEU加盟に反対するのを回避するため、独立を思いとどまったという経緯があります。ところが、もはやイギリス自体がEUを離脱しているため、今度こそイギリスから独立してEUに入ろうというスコットランド人が優勢になっているのです。

「国民国家」に閉じこもるイギリスの末路

 この問題は、まだまだ流動的です。ブレグジットによって、イギリスはEUの外に出たわけですが、イギリス領の北アイルランドとアイルランド共和国との陸続きの国境に税関など国境管理措置を設けることは困難なため、グレートブリテン島とアイルランド島との間に通関上の境界を設定しました。それでも、数百の港から出たものを検査しなければいけないわけですから、ブレグジットする前と比べると検査が格段に複雑になります。

 その上、スコットランドが独立してEUに加盟したらどうなるか? 当然、スコットランドとイングランドの陸続きの境界がEU国境になります。しかし、ここは無数の道路や鉄道が走っていますから、そのすべての通行時に検査や検問をしなくてはいけなくなりますが、それは現実的に不可能です。

 それだけではありません。スコットランドが独立すると、当然ウェールズも手を挙げます。このウェールズは、多数の日本企業が進出している地域ですけれども、自分たちもイングランドに征服されたと考える市民が多いので、ここも独立気運が高まっています。

 そうなってくると、イギリスは「ユナイテッド・キングダム(UK/連合王国)」ではなく、“シングル・キングダム”あるいは“イングランド・アローン”というふうになる可能性が高まっていくと思います。そんな未来がだんだんと見え始めています。

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚を発表した長澤まさみ(時事通信フォト)
《トップ女優・長澤まさみの結婚相手は斎藤工と旧知の仲で…》インスタ全削除の“意味深タイミング”
NEWSポストセブン
箱わなによるクマ捕獲をためらうエリアも(時事通信フォト)
「クマが人里に降りてくるのは必然」「農業は野生動物に対する壮大な餌付け」 知床・ロシアでヒグマを撮った動物写真家が語る “現代の人間に欠けている自然観”
NEWSポストセブン
11人家族の宮前家
《子ども9人“大家族のパン屋さん”》「店員さんが注文を覚えきれなくて(笑)」11人家族のインフレ“金銭事情”と、大人数子育てで培ったこと「マニュアル本は役に立たない」
NEWSポストセブン
長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
インフルエンサーのぴきちんさん(Instagramより)
《2年連続ポストシーズン全試合現地観戦》大谷翔平の熱狂的ファン・ぴきちん、全米巡る“体力勝負”の脅威の追っかけはなぜ可能なのか
NEWSポストセブン
2024年に『ウチの師匠がつまらない』を上梓
「視聴率とれたらオレのおかげ?罰が当たるよ」三遊亭好楽さんが『笑点』メンバーや裏方に愛され続ける“お客さんファースト”  地方営業で土産を爆買いも
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン