結局、ジョンソン首相が主導する閉鎖的な国民国家、イギリスの「自国ファースト」の行き着く先は「UK崩壊」ということになります。そして、そんな未来がしだいに現実味を帯びてきたら、イギリス国民の間で、やはりまたEUに戻ろうという動きが出てこざるを得ないと思います。
冷静に考えれば、こうした事態は十分予想できたはずで、私はブレグジットが決まった日に、イギリスの公共放送「BBC」に出演してそう指摘していたのですが、司会者はまともに取り合おうとしませんでした。
ジョンソン首相は、新型コロナ対策でも自ら規制に違反するなどして国民の信頼を失い、支持率は記録的な低さになっています。このような政治リーダーと運命を共にしていいのかが、イギリス国民1人ひとりに問われていると言えるでしょう。
「多様な人材」こそ力になる
イギリスのように閉鎖的な国民国家が行き詰まっている一方で、世界でいま繁栄しているところを見ると、それは「国ではない」ということがわかります。
人・モノ・カネ・情報が国境を越えて集まってくる地域「メガリージョン」というものが世界にはいくつか見え始めていて、近刊『経済参謀』で詳述した通り、アメリカ、中国、インドでそれぞれ3か所ぐらいに集約されます。
また、巨大ハイテク企業やホームレスマネーは国境を越えて世界中から富を吸い上げています。たとえば、GAFAM(ガーファム/グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)とかBATH(バース/バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)などの時価総額は、国家経済の規模です。
アップルやマイクロソフトの時価総額はイタリアのGDPより大きく、グーグルやアマゾンはカナダのGDPを超えています。1企業の価値が1国の経済規模を超えるという状況です。もちろん、前者は未来永劫の利益で、後者は単年度の付加価値の累計という違いがありますが、規模が同じくらいになったというのは画期的なことです。